「大学の特長、ココにあり!」を振り返って
「大学の特長、ココにあり!」とは?
「大学基準協会公式note」では、「大学の特長、ココにあり!」と題して、本協会が行っている大学評価の結果において、「長所」となった各大学の優れた取組みについて取材し、それらをより詳しく、よりわかりやすくご紹介しています。
記事を振り返るにあたって
2021年5月よりスタートした本企画ですが、延べ12大学にご協力いただきながら記事を掲載してきました。今回は、各大学の取材を担当してきた私がこれまでの取材を振り返るとともに、取材を通じて感じたことや考えたことについて書いてみたいと思います。
振り返りにあたっては、個人的に印象に残っている以下の2つの点から各記事を見ていきたいと思います。まず1つ目は、「大学の歴史や理念を深める取組み」です。いずれの取材でも、まず初めにその大学の設立経緯や建学の精神、教育理念についてお伺いし、創立者の想いがその大学の教育活動にどのように反映されているかを理解するようにしていますが、その中でも特に印象的だった大学をご紹介します。また、もう1つは、「社会連携に関する取組み」です。こちらは、今年度の取材大学で多く見られた特長ですが、各大学とも企業や自治体と連携し、学生に貴重な経験を提供する素晴らしい活動ばかりでしたので、その中から数大学をピックアップしてみたいと思います。
大学の歴史や理念を深める取組み
本協会の大学評価では、大学が掲げている理念・目的を体現しつつ、かつその成果が教育に表れている取組み等を「長所」として挙げています。実際にご紹介いただくと、「長所」となった取組みを行う大学の想いが伝わり、その意図をより深く理解できると感じています。
その中でも印象に残っている取材が、連載第1回目の日本女子大学です。近年は女子大学の存在意義について話題にあがることがありますが、この取材では、女性が社会で活躍していくための教養講義といった女子大学ならではの学びや、ライフイベントで離職してしまった女性へのリカレント教育の提供、その後の再就職支援等についてお話を伺うことができ、まさに女子大学で学ぶ意義を体現した取組みだと感じました。その詳しい内容は記事をご覧ください。
沖縄大学の特徴的な授業科目である「沖縄大学論」も印象的な取材の1つです。この授業は、歴代の学長をはじめ、教職員の方々がオムニバス形式で講義を行い、戦後アメリカの施政下で沖縄大学がどのような経緯で設立に至ったのかについて学びます。この講義を通じて、「沖縄大学で学ぶ意義」について深めていくことを目的としています。
学長や設立時を知る方の生の声から、大学ひいては沖縄の歴史を辿り、それを踏まえて、「今ここで学ぶ意義は何か?」を学生に考えさせている点が印象的でした。
ご紹介した2大学とも創立者の大学設立に対する熱意を当時のエピソードとともにお話しいただきましたが、そうしたものをさまざまな方法で学生に浸透させていくことで、創立者の精神が次世代へと受け継がれているのではないかと感じました。
社会連携に関する取組み
建学の精神や理念に社会連携や社会貢献を掲げ、企業や自治体と連携して優れた取組みを実施している大学も数多く見られました。例えば、早稲田大学では、自治体と連携した地域密着型の社会連携活動として、学生がフィールドワークを通じてその地域が抱える課題解決を目指す活動が行われていました。
また、工学院大学では、第一次産業から商品開発までを学生が一貫して体験できる取組みである「みつばちプロジェクト」についてお話しいただきました。このプロジェクトにおいて、学生は企業と協働しながら養蜂を行い、その養蜂で採れた蜂蜜を利用した商品開発を行っています。
さらに、マグロの養殖で有名な近畿大学では、そのマグロを使用したおせちを学生が企画・開発している取組みをご紹介いただきました。また、地域企業との関わりという面では、地元の百貨店と連携し、季節のイベントを盛り上げるために手提げバッグを作成するといった取組みも実施されていました。
このように、社会と連携した取組みの共通点として、学生が積極的に参画していることが挙げられます。こうした取組みは、地域や企業が抱える課題の解決や商品等を企画する経験を通じて、学生の主体性を高めるとともに、連携する自治体や企業にとっても、学生の意見や考察が課題の突破口になるなど、お互いにプラスの影響を与え合うことができる活動であると感じました。
おわりに
これまで各大学のさまざまな取組みを取材してきましたが、どの取組みにも共通するのは、学生に多様な学びを提供したいという教職員の方々の熱意と、その実現に向けて大学全体で積極的にサポートしていく姿です。
例えば、学外の関係者に協力を仰ぎ、学生に普段の授業では体験できないような学びを提供したり、学生が活動の中で躓いたり悩んだりした際、適宜アドバイスを行える体制を整備していることなどが挙げられます。そして、こうした大学側の学生に対する想いは、取材に参加いただいた学生の方の声からもしっかり伝わっていることが分かりました。
今回、記事の分量の関係で取りあげられなかった多くの大学でも、その大学の精神や理念が反映された取組みや、その大学ならではの特色を兼ね備えた取組みを実施しています。
この「大学の特長、ココにあり!」では、そうした取組みに関わる教職員の方々の熱意や、参加する学生の体験談を多数掲載しています。昨今の大学の取組み事例を知りたい方や、大学進学を目指している方、大学教育にご興味のある方等、多くの方にぜひ読んでいただきたいと思っています。
なお、各大学の評価結果における「長所」は本協会の「大学の長所・特色検索」ページから検索でき、取組みの詳細を確認することが可能です。是非ご覧いただければ嬉しいです。