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大学の特長、ココにあり!#4     早稲田大学における社会課題や地域課題の解決を図る教育プログラムの体系化に向けた取組み 後編

大学基準協会公式note

 本協会の大学及び短期大学等の評価は、大学・短期大学の教職員、その他高等教育関係者の方々によって行われています。
 このコーナーでは、そうした評価の結果において、大学関係者が認めた優れた教育活動等について、評価結果の内容をさらに深掘りして、皆様にご紹介していきます。
 4回目となる今回は、2020年度に評価を行った早稲田大学にご協力いただき、社会や地域と連携して学生が主体的に問題解決に取り組むプロジェクトについてお話を伺いました。

 前編では、早稲田大学の建学の理念である三大教旨に示された社会連携・社会貢献に対する考え、そして、それらを具現化した教育活動である「プロフェッショナルズ・ワークショップ」についてお伺いしました。
 引き続き後編では、社会連携・社会貢献に関連したもう一つのプログラムである「地域連携ワークショップ」についてお伺いします。

前編の記事はこちら

社会や地域との連携を推進する教育プログラムについて

②「地域連携ワークショップ」について

――「地域連携ワークショップ」はどのような活動なのでしょうか?
田中:もともと、先の「プロフェッショナルズ・ワークショップ」において、企業との連携のほかに、全国の自治体と連携して地域課題を解決する取組みを実施していましたが、ワークショップを続けていく中で、学生や連携先の自治体からのニーズが非常に高いということが分かってきました。こうしたことから、2017年度より、「プロフェッショナルズ・ワークショップ」から独立した形で、「地域連携ワークショップ」をスタートさせました。
 内容としては「プロフェッショナルズ・ワークショップ」と同様、連携先の自治体が実際に抱えている課題に対して、学生たちが課題の解決策を提案するものになっています。
 具体的な活動の進め方は、まず公募で募集した学生による学部横断型のチーム作り(1チーム約5名)から始まります。その後、連携先の自治体による説明を受け、まちづくりや観光などの与えられた課題に対してチームで下調べを行い、仮説を立てた上で実際に現地へ行き、フィールドワークを通じて解決策を考案します。解決策は、報告会を開催して自治体の方々に提案しています。
 今年度は、佐賀県唐津市、石川県珠洲市、岩手県田野畑村、茨城県八千代町の4つの自治体と連携したワークショップを実施し、人が集まる環境づくりや資源を活かした働き方等、それぞれの地域の課題解決に向けて、学生たちに取り組んでもらいました。

(木島平村のワークショップ(2019春)のワークショップの様子)

――連携先の自治体が実際に抱える課題を解決するために、フィールドワークではどのようなことを行うのでしょうか?
田中:学生は、定期的にその地域に滞在し、人々との触れ合いを通じて調査をしたり、自治体関係者や地域の住民の方へヒアリングを行ったりします。そうした交流から、その地域の魅力や抱えている課題を理解し、与えられた課題の解決策をチームで考えていきます。
 学生にとっては、フィールドワークを通じて多様な価値観と接する中で、自身が主体的に学び成長する機会になっています。学生の中には、ワークショップ終了後や卒業後も引き続き自治体との交流を続けている人もいるほど、地域の人々と深く関わっています。

(南伊豆町のワークショップ(2019夏):地域住民ヒアリングの様子)

学生や自治体からの反応

――参加した学生の反応はいかがでしょうか?
荻原:さまざまな正課への往還があり、「研究やゼミでもっと意識して頑張りたい」、「地方創生の勉強をしていきたい」という感想や、教育学部の学生からは、「教職の授業でもっとディスカッションをしていきたい」といった声がありました。また、理系の学生からは「建築学科の設計課題において、その地域や人の興味関心、気候を調査することで、住んでいる人々にとって最もいい建築を設計していきたい」といった声もあがっています。学生へのアンケートでは、ワークショップでの経験により、「相手の状況や考え方を尊重できる」「公正な視点で多様性を受け入れられる」「異文化を理解できる」といった項目で力が身に付いたとの回答が多くありました。
 「地域連携ワークショップ」においても、課題解決策を提案して終わりではなく、このワークショップでの経験を通して自己理解を深め、多様な価値観を持つ人々と交流した上で自身がどう変わったのか、どのような知識が得られたのかなどについて、報告会で学生がプレゼンを行い、振り返りの機会を作っています。
 正課外の教育プログラムでの経験を正課の授業でも活かせるように、今後もこうしたワークショップを学生たちの成長につなげたいと考えています。

――連携先の自治体の方々からの反応はいかがでしょうか?
田中:自治体の方々からは、「地域住民が東京の大学生と交流することによって、自分たちの中の人間だけではなく、外の人間が注目しているということ、若者が地域のことを考えてくれるということが活力になった」「ワークショップで実際にあがった解決策の実装を検討したい」という声をいただきました。「プロフェッショナルズ・ワークショップ」の企業と同様に、複数年継続してご協力いただいている自治体もあります。

(佐賀県唐津市のワークショップ(2021夏):市長ヒアリングの様子)

ワークショップにおける教職員の関わりについて

――本協会の認証評価結果では、今回の各ワークショップにおける教職員の方々の関わりを評価のポイントの1つにあげていますが、実際にはそれぞれがどのように関与しているのでしょうか?
田中:1ワークショップあたり2~5名の職員(当課職員1~2名、サポート職員1~3名)が運営にあたっています。そのうち当課職員の役割は、連携先との意見交換や調整を図りながら各ワークショップのテーマ設定やスケジュール、学生数やチーム編成等の確認といった企画(P)、ワークショップの進捗管理や軌道修正等の実行管理(D)、学生の成長に関する成果の確認(C)、そして次回ワークショップへの反映(A)を担います。PDCAを回しながらワークショップのさらなる充実を図り、プロジェクトマネジメントや学生支援、ファシリテーションといった大学職員に必要なスキルを習得していきます。
 また、当課以外のサポート職員については、学生のサポートとファシリテーションの部分を主に担当し、具体的には、応募する学生の選考や各ワークショップへの同席、学生の自主ミーティングへの参加、「地域連携ワークショップ」であれば地域住民の方へのヒアリングへの同席等を行います。
 教員については、それぞれの専門的な知見から、各ワークショップの中間あるいは最終報告会での講評、専門的な知識のインプット等で関わっています。最終報告会には、連携先の役員や経営陣の方々、本学からは理事等も出席します。

(サントリー食品インターナショナル株式会社のワークショップ(2021夏):最終報告会の様子)
(株式会社読売新聞のワークショップ(2021秋):最終報告会の様子)

今後の展望について 

――「プロフェッショナルズ・ワークショップ」と「地域連携ワークショップ」の今後の展望についてお聞かせください。
荻原:昨年度から、コロナの影響でそれぞれのワークショップを全面オンラインで実施しています。初めは手探り状態でしたが、学生のアウトプットもこれまでと遜色ないものができたので、今後はオンラインでの良さと、現地に行く良さを踏まえ、ハイブリッド型での実施も検討しています。
 また、大学職員の参画については、学生との関わりが少ない、あるいは学外活動を仕事では体験できない職員もいるので、入職3年目職員については研修の一環として、当課各ワークショップへサポート職員として業務運営に携わり、その経験を本業に活かすとともに、本学施策の提案に結びつける取り組みを今後も継続予定です。この経験を通して、社会で求められている大学のミッションを肌で感じ、職員として成長していけるよう、今後も本学の職員育成に活用していければと考えています。

取材を終えて

 今回取材した「プロフェッショナルズ・ワークショップ」と「地域連携ワークショップ」は、早稲田大学の社会連携・社会貢献の想いに基づいて、企業あるいは自治体と学生と大学が三位一体となって進めている活動です。
 担当部署以外の職員や教員も一体となって取り組んでいることも、これらのワークショップの大きな特徴であり、教育プログラムとしての体系化が見据えられている取組みだと感じました。
 また、学生は、ワークショップでの経験を通して、どのような学びがあったのか、どのようなスキルが身に付いたか、そして、自分がどのように変わったのか等の振り返りを行っています。このように、体験だけで終わりにするのではなく、自己理解を促す機会を持つことが、早稲田大学が学生に求める「たくましい知性」と「しなやかな感性」を育むことにつながっているのではないかと思いました。


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