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大学の特長、ココにあり!#1    日本女子大学における「社会で自立した女性」を目指す教育 後編

前編の記事


学びの特色2「リカレント教育課程」

お話しいただく方
日本女子大学 文学部 日本文学科、生涯学習センター所長
坂本 清恵 教授

「リカレント教育課程」の設置経緯

――もう一つの特色である「リカレント教育課程」について、どのような経緯で設置されたのでしょうか?
坂本教授(以下、「坂本」):「リカレント教育課程」は2007年の9月に設立されました。設立当時は、女性が大学を卒業して就職したにもかかわらず、結婚、出産によって離職せざるを得ないという状況がありました。また、当時は急速にIT化が進む環境でしたが、初職のときにはほとんどコンピューターを使ったことがないという女性が多く、再就職をしたくてもなかなか難しいという状況でもありました。こうしたことから、本学では、大学を卒業した優秀な女性を再教育して再就職をさせるプランを立て、2007年に文部科学省の「社会人の学び直しニーズ対応教育推進事業委託」に採択され、本課程を設置することとなりました。
 本課程は、創立者の成瀬仁蔵の方針である「生涯にわたる学びと貢献」のために「幾歳になっても青年の様な旺な精神を以て益々奮闘して境遇を開いて行く」ことが必要であるという教育理念に基づいて設置されています。
 また、立ち上げには、現在本学の名誉教授であるソーントン不破直子氏の「卒業生はもとより、全ての女性にとって人生航路の必要なときに立ち寄り、休息し、給油し、糧食を得て、次の航海に再出発できる港になりたい」という強い想いによってスタートしました。第1回生は本学の卒業生だけでしたが、2回生以降は他大学の卒業生も増えてきて今日に至っています。
 この「社会人の学び直しニーズ対応教育推進事業委託」には多くの大学が応募しましたが、採算が取れないことから、委託期間の3年が過ぎたところで、ほとんどの大学が継続を断念せざるを得なくなりました。しかし、本学では、先ほどの「生涯教育」という教育理念に基づき、本事業を生涯学習センターの所管とし、今年の9月で15年目を迎えるところまで続けてきました。その間には、リーマンショックや東日本大震災などもあり、必ずしも順風満帆な経営ではありませんでしたが、2021年4月までで161大学・大学院から計679名の卒業生を受け入れてきました。

――「リカレント教育課程」へ入学するにあたっての条件はあるのでしょうか?
坂本:設置当初から4年生大学を卒業していることのみを条件として、これまで様々な大学の卒業生を受け入れてきました。2021年4月時点で、本学の卒業生が23%、他大の卒業生の方が74%という割合になっています。

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(資料提供:日本女子大学 坂本清恵教授)

授業内容

――実際にどのような教育を行っているのでしょうか?
坂本:開講科目については、キャリアの世界に戻っていくことを前提に、ビジネススキルを十分に身に付けることに重点を置いています。また、社会人の学びなので、ビジネススキルだけでなく、キャリアカウンセラーや学部の就職担当を経験した職員による指導を受けるなど、社会で生きていくための様々なスキルを身に付けられるようにもしています。
 例えば、必修科目に「キャリアマネジメント」という科目がありますが、ここでは、受講者自身のキャリアを振り返りながら、今後どのようなライフスタイルを形成していくのかについて受講者同士でディスカッションしながら、それぞれが新しいキャリアを考えていくという双方向参加型の授業を展開しています。

 他にも、英語やITスキル、日本語コミュニケーション等、ビジネスの世界で欠かすことのできない科目を必修とし、さらに、受講者が今後どのような働き方したいのかということを踏まえて、選択必修科目を選べるようにしています。また、学部の授業を科目等履修生として受けられるようにし、学部科目を「リカレント教育課程」の修了科目に認定しているものもあります。
 また、企業の連携プログラムとして、野村證券からは寄付講座を、大同生命保険会社からはオンデマンドコンテンツの作成にあたりご寄付をいただいています。こうした学内のプログラムの他に、さらに学びを広げるために東京商工会議所と提携し、商工会議所が実施している研修講座を特別価格での受講許可と、再就職の支援をしていただいています。

日本女子大学のリカレント教育における特徴

――日本女子大学のリカレント教育における特徴はどのような点でしょうか?
坂本:まず、2010年から「リカレント教育委員会」を設置し、各学部の教員も教育の内容の改編等について助言するなど運営に携わっています。このようなリカレント教育を支える組織があることは他大にはない特徴ではないかと思います。
 また、本学の「リカレント教育課程」の一番の特徴になりますが、設置当時から、大学の教員が片手間に教えるのではなく、本課程のための実務家教員を採用しています。そして、そうした実務家教員も「リカレント教育委員会」のステークホルダーとして運営に関わっています。

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(資料提供:日本女子大学 坂本清恵教授)

 さらに、再教育の支援はできていても、再就職の支援がないというリカレント教育が多いのが現状ですが、本課程においては、設立当時から再教育と再就職の2本柱で取り組んできました。
 再就職については、東京商工会議所、文京区や東京労働局による企業説明会の実施等のサポートを受けています。再就職支援を続けてきたことは本学の大きな特徴だと思っています。

コロナ禍の授業

――昨年度のコロナ禍において、授業や企業説明会等はどのように対応されたのでしょうか?
坂本:本学の学部教育では、学習管理システム(LMS)manabaを使用していますが、2020年度より、これを「リカレント教育課程」でも利用するということが決まっていました。コロナの影響で授業のスタートは1カ月遅れましたが、このシステムの導入によって、5月から学部と同様にオンラインによる授業を展開することができました。オンデマンド配信もあれば、Zoom、Teamsによるオンライン授業もあり、様々な方法で前期、後期と進めてきました。後期になると少し入校制限が解けたので、対面とオンラインを組み合わせたハイブリッド型でも実施しました。また、企業説明会についても昨年度はオンラインによる実施となりました。

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(資料提供:日本女子大学 坂本清恵教授)

 各教員が工夫して授業を実施していることはもちろんですが、それに加えて、manabaを使えたということも功を奏したと感じています。Zoomのブレークアウトルームでは意見交換も今までどおりにできましたし、これからリモートワークが当たり前になるかもしれない受講者にとっては、様々なタイプのオンライン授業を受けられたということは非常に良い経験になっているのではないかと思います。
 また、本課程では280時間以上の受講という修了要件があり、2019年度は平均受講時間が325時間でしたが、2020年度は、平均376時間に及びました。オンライン授業に切り替えたことによって、通学にかかる時間を学びに振り替えられた方が多く見られました。

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(資料提供:日本女子大学 坂本清恵教授)

 今後も、オンラインの方が有効なものはオンラインで運営していきますが、受講生同士の交流によって、精神的に支えあいながら、ネットワークを構築するという面で非常に重要ですので、週2日は対面で実施し、あとはオンラインでというような形で、複合的な学びの場を設けていくように考えています。

今後の展望

――生涯学習に関して、海外と比較すると日本の大学は発展途上の段階にありますが、今後の展望についてお聞かせください。
坂本:2019年12月に「女性のためのリカレント教育推進協議会」を日本女子大学、明治大学、福岡女子大学、関西学院大学、京都女子大学、京都光華女子大学のリカレントプログラムを運営する6大学で立ち上げ、今年は山梨大学も加わり7大学で活動しています。これは、同年に日本経済団体連合会と各大学の学長がリカレント教育について協議を始めたものの、女性のためのリカレント教育にはあまり焦点が当たっていないことが分かり、啓発活動のために6大学共同でスタートした取組みです。

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(資料提供:日本女子大学 坂本清恵教授)

 さらに2020年度に本学が代表校として、文部科学省の「女性の多様なチャレンジに寄り添う学びと社会参画支援事業」における普及啓発事業に応募し、「女性のためのリカレント教育に関わるネットワーキングの構築」を採択いただきまして、1年間にわたり講座の運営を行ってきました。
 これには、2018年に本学が文部科学省に採択された「女性の学びとキャリア形成・再就職支援を一体的に行う仕組みづくりとニーズ調査によるリカレント教育モデル構築のための実証事業の実施」という事業内で行ったアンケート調査が関係しています。
 このアンケートの結果で驚いたことは、86%の女性がリカレント教育という言葉を知らなかったということです。リカレント教育が認知されていないことは女性だけではなく企業でも同様です。この現状に鑑み、自分のスキルを磨くために自己投資している女性がいることを知ってもらわなくてはならないということを強く感じました。そのためにはどのような学びが必要なのかを検討し、「女性のためのリカレント教育に関わるネットワーキングの構築」という講座を実施しました。

 シンポジウム等を開催していく中で、企業側は女性が学ぶということについて非常に消極的であることが分かり、ますます啓発活動の重要性を感じています。
 また、コロナ禍で実感したことは、全国どこからでもオンラインで学ぶことができるということです。
 本学ではこの6月に、これまでの再教育・再就職のためのキャリアアップコースの他に、働きながら学ぶ「働く女性のためのライフロングキャリアコース」を開設します。こちらは全てオンラインで行うことにしました。
 さらに、現在も取り組んでいる文部科学省の支援事業では、学校法人先端教育機構と社会情報大学院大学が代表として立ち上げた「実務家教員COEプロジェクト」に連携校として、武蔵野大学、事業構想大学院大学とともに、本学も参加しています。先ほど触れたように、本学の「リカレント教育課程」は実務家教員に支えられ、それが非常に良いところでもありますが、実務ができても教え慣れていない場合もありましたので、模擬授業の指導を行うことにより、実務家教員養成をサポートしています。

――様々な新プロジェクトが始まっていますね。最後に読者の方へメッセージをお願いします。
坂本:今年の1月に東京都の「女性活躍推進大賞」を受賞しました。以前、内閣府から「女性のチャレンジ支援賞」というのも受賞したこともありましたが、新たに東京都の大賞を頂きました。これからも、全国にリカレント教育の普及啓発に努めながら、日本女子大学のリカレント教育の内容を充実させていくことが使命だと思っています。

成瀬記念講堂

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取材を終えて

 今回「教養特別講義」と「リカレント教育課程」について詳しく伺ってきましたが、どちらの取組みも、創立者の成瀬仁蔵氏の「人間教育」の理念に通ずるものだと感じました。
 例えば、「教養特別講義」では学生による講師の選出等、主体的な学習の場が設けられており、「リカレント教育課程」では大学と企業等が連携して再就職を支援し、社会で女性がどのようにライフスタイルを形成していくかということを、受講者が自主的に考えるスキルを養う授業が実施されています。
 いずれの取組みも、「人として生きていくために」という前提があり、日本女子大学の「自立した女性像」とは、いかなる状況下においても、柔軟な思考を以て自身の力で解決できる人であるということを、取材を通して改めて感じました。


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