季節はずれの「サクラサク」~入試のハイシーズンが秋に?!|3分で知る!大学の今 #7
秋に「サクラサク」?
昭和30年代に始まった、大学の合格を報せる電報の文面「サクラサク」は、大学入試の合格発表が2月から3月に行われることに由来し、現在でも合格を示す慣用句として用いられています。しかし、最近は、秋に行われる入試での入学者が増えているので、「サクラサク」が季節外れになってしまうことも多いようです。昨今の大学入試では何が起こっているのでしょうか?
入学者の半数以上は、年内に合格が決定!
大学入試の形態は、大きく3つに分けられます。従来型の「一般選抜」(主に筆記試験による選抜)、「学校推薦型選抜」(所属の高等学校長の推薦に基づく入試)そしてもう一つは「総合型選抜」(旧「AO入試」)です。文部科学省の調査「令和5年度国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況の概要」によると、「学校推薦型選抜」と「総合型選抜」による入学者は年々増えており、すでに全体の50%を超えています。「総合型選抜」は9月から、「学校推薦型選抜」は11月から募集を開始し、多くの場合年内に合格者を発表することから、受験のハイシーズンが秋にシフトしてきていると言えるでしょう。
以下、秋に募集を開始する2つの入試「総合型選抜」「学校推薦型選抜」について紹介します。
総合型選抜とは
「大学入学者選抜実施要項」*には「詳細な書類審査と時間をかけた丁寧な面接等を組み合わせることによって、入学志願者の能力・適性や学習に対する意欲、目的意識等を総合的に評価・判定する入試方法。」とあります。一次試験は「活動報告書」や「大学入学希望理由書」による書類審査、二次試験は提出資料にもとづいた面接と、「大学入学共通テスト又は小論文等、プレゼンテーション、口頭試問、実技、各教科・科目に係るテスト、資格・検定試験の成績等」による「大学教育を受けるために必要な知識・技能、思考力・判断力・表現力等」の評価によって選考する大学が多いようです。英語では「Comprehensive(複合) selection」というように、いくつかの観点で複合的に評価する入試が「総合型選抜」です。まさに「Comprehensive」、言い得て妙ですね。
学校推薦型選抜とは
以前、「推薦入試」と呼ばれていた高等学校からの推薦を受けて出願する入試で、指定校制(大学から指定された高校から一定数の出願を可能とする、旧、指定校推薦)と公募制(どの高校の生徒でも出願可能)の2種類があります。高校での成績や課外活動などの状況を評価することに重点が置かれますが、「総合型選抜」同様、調査書・推薦書等の書類審査に加えて、各大学で検討した評価方法(小論文等、プレゼンテーション、口頭試問、実技、各教科・科目に係るテスト、資格・検定試験の成績等)、もしくは「大学入学共通テスト」を用いた評価が行われることとなっています。
「サクラサク」は「モミジイロヅク」に?~今後の入試の展望~
先述の文部科学省の調査「国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況の概要」によると、総合型選抜で入学を決めた学生はここ数年、毎年6,000人~7,000人ずつ増加している状況です。総合型選抜を導入しているのは私立大学が中心ですが、その背景には、多面的・総合的に評価する総合型選抜によって多様な学生を入学させたいこと、18歳人口が減少する中で、早くに入学者を確保したいということがあるようです。できるだけ早く進学先を決めたいのは、受験生も同じですよね。
先日、本協会が主催した「大学進学セミナー」(2024年9月28日開催)において、沖清豪先生(早稲田大学文学学術院教授)は「高大接続改革で探究型の学習が進んでいくと、国立大学やこれまで学力試験を重視してきた私立大学でも、大学入学共通テストと探究学習の成果を組み合わせて評価する新しいタイプの総合型選抜が増えてくるのではないか」と話されていました。
また、学校推薦型選抜について、「今まで知識・技能をあまり重視してこなかった大学などでも、独自のテストや大学入学共通テストの結果などを組み合わせる形で、基礎学力を確認する学校推薦型選抜が増えていく可能性もある」と語りました。
「すべての入試を総合型選抜にする方向」を明言している大学もあり、総合型選抜での入学者が増加することをはじめ、今後も大学入試は変わり続けていくでしょう。合格を示す言葉が「サクラサク」から「モミジイロヅク」に変わる時代が来るかもしれません。
*文部科学省「令和7年度大学入学者選抜実施要項」令和6年6月5日付け
総務部総務企画課 蔦美和子、串田藍子、井上陽子