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#5 大学選びや進路指導における大学評価結果の活用方法

 このシリーズでは、大学評価のことをもっと皆さんに知っていただくために、評価機関だからこそお伝えできる情報をいろいろな観点からお届けいたします。今回は、大学選び・進路指導への評価結果の活用方法について、静岡県立浜松北高等学校 大村勝久先生の活用事例をもとにご紹介します。

※本記事は、2023年11月に開催した「大学進学セミナー」における静岡県立浜松北高等学校の大村勝久先生によるご講演内容をもとに本協会で構成したものです。


はじめに

 大学数の増加や入試制度の多様化などで、高校生の大学選びは以前よりも複雑になってきています。せっかく入った大学を中退する学生が年間約6万人いることや、中退はしないまでも大学に馴染めないケースも少なくないことから、自分に合った大学選びの重要性はますます高まっています。
 大学選びにおいては、信頼できる情報を得て、興味のある大学について詳しく調べることが欠かせません。私たち認証評価機関が、第三者の視点で客観的に評価した大学評価結果を、皆さんにぜひ活用していただきたいと思います。

大学評価結果が大学情報として優れているのはナゼ?

 大村先生は、次の2点を大学評価結果の優れた点として挙げています。

①大学の理念や建学の精神等に照らして、教育研究に関する個々の取組みを評価している
 →評価結果からは、大学それぞれの特長や強みを把握することができ、また大学案内等には掲載されていない情報を知ることができます。

②大学の良い点だけでなく、改善点を公表している
→良い点だけでなく、改善点も知ることで、その大学の状況を客観的に把握することが可能になります。
(もっとも、改善点があるからといって、ただちに問題のある大学ということではありませんので、それぞれの改善事項を注意深く読まれることをお勧めします。)

 大学評価は、ランキングや偏差値のように各大学を相対的に評価するものではなく、それぞれの大学が自らの理念・目的をどの程度達成しているか、自らの教育研究等の質を保証できているか、という観点から行われています。そのため、評価結果を読むことで、各大学の教育研究などの取組み状況や、効果が上がっている点、課題等、様々なことが見えてきます。こうした情報が、大学選びに役立つのです。

進路指導における活用事例

 具体的に、大学選び・進路指導に評価結果をどのように活かすことができるのか、大村先生の活用事例を見てみましょう。

CaseA
 コロナが猛威を振るっていた時期、医学系のA大学がワクチンの臨床試験やPCR検査、大規模ワクチンの接種などに取り組んでいるという話をニュースで聞いて、素晴らしい取組みをしていると思ったものです。そういったことが、評価結果の「総評」部分にも特筆すべき点として書かれていました。
 医学部を志望する生徒Aに、「A大学は、コロナで大変だった時期にこのような取組みをして、社会・地域に貢献している。地域に密着した医師になることを志しているのなら、こんな大学もあるよ」とアドバイスしました。こういったことは偏差値やランキングからは分からないことです。評価結果を用いることで、偏差値のみに頼らない進路指導が実践できた一例です。

CaseB
 生徒Bが、本校から遠く離れたB大学に進学したいという話を聞きました。この大学は特長的な教育活動を数多く実践しており、以前から様々なメディアで取り上げられていました。しかし、本校からの進学者が少ないことなどもあり、私自身、具体的な教育活動については詳しくありませんでした。
 この大学の評価結果を読んでみると、「『多文化協働学習』が、当該大学の理念・目的を体現するものであり、教育の方法論として確立し、大学に根付かせていることは特筆すべき」と書いてあります。また、「教学委員会において授業の質の改善も進めている」ともありましたので、これらから教育の質がますます良くなっていくことが推察されました。評価結果からは大学の変革や質が分かります。
 その結果、「大学基準協会に評価されている、素晴らしい教育を行っている大学だよ」と、生徒の背中を押してあげることができました。

CaseC
 昨今、年内入試で進路を決定する生徒が多くなっています。高校の先生方も「指定校推薦」や「総合型選抜試験」で受験する生徒の推薦書を書いたり、面接の指導をしたりする機会が増えているはずです。その際、大学案内や「3つのポリシー」などを参考に推薦書を作成されると思いますが、ここでも評価結果を活用することができます。
 評価結果には、各大学の理念や目的に沿った教育活動が記載されています。例えばC大学の場合、大学の理念・目的を実現するための中・長期計画の具体策として、「24時間リベラルアーツ教育の推進」「世界標準カリキュラムの充実」等、4つの項目が示されていました。
 評価結果において大学の具体的な施策を知ることで、その大学の理念・目的や今後のあり方をより正確に把握することができ、その大学についてより深く理解した上で推薦文の作成等に取りかかることができます。

評価結果を身近に感じるためのおススメ方法

 上の3つの事例から分かるように、評価結果は、その大学をより深く理解するための有用な資料の一つといえますが、初めてご覧になる方にとって、数十ページに及ぶ膨大な文章を読むというのはややハードルの高い作業といえます。大村先生は、まずは馴染みのある自分自身が卒業された大学の評価結果を読んでみるということをおススメされています。
 認証評価(大学評価)を行っている評価機関は2024年2月時点で5団体あり、大学は、7年以内に1度、そのいずれかの団体で評価を受けることになっています。評価結果は各評価機関のホームページ、またはすべての大学の評価結果を検索できる認証評価機関連絡協議会のホームページからご覧いただけます。

 大村先生はご自身の大学(出身校)の評価結果を読んだ感想を次のようにお話してくださいました。

 内部質保証を推進して学内の改革が急速に進んでいることや、教育内容の充実が図られ、履修モデルなどがホームページで公開されるようになっていること、個々の学生に応じた適切な履修指導が行われていることなどが把握できました。
 また、昨今、各大学は様々な社会貢献活動を行っていますが、出身校でも多くの公開講座を開設しているようでした。
 それと…大学の理念や建学の精神に関する部分を読んで、自身は高校の教員として出身校の理念・目的を全うしているかを振り返るきっかけにもなりました。

 なるほど! 最も良く知る大学である出身校の評価結果を読んでみると、評価結果が身近なものになり、評価結果への理解も深まりますね。ご自身の出身大学がどのように評価されているのか、これまで知らなかったことも見えてくるかもしれません。

まとめにかえて

 今回は、高等学校の先生が、評価結果を進路指導に活用している実例をご紹介しました。大学基準協会としても、現場で利活用されているお話は大変貴重で有益でした。

 大村先生は、講演の結びの部分で「大学評価は生徒に合った大学探しの大きな指標になる」と力強くおっしゃいました。そして、「卒業生が訪ねてきて、近況報告として『僕が進学した大学は素晴らしいから、後輩に勧めてほしい』と、笑顔で語ってくれることが何より嬉しいです。今後も志望校選びの一つの指標として、進路指導の場で積極的に評価結果を活用していきたいと思います。」とも話してくださいました。

 本協会の大学評価は、大学関係者を中心に多くの方々のご協力のもと、たくさんの時間と労力をかけて行っています。そうしてできあがった評価結果がこのように活用され、大学生の充実した学生生活に繋がっているのであれば、本協会としてもこれほど嬉しいことはありません。

 今回の記事を参考に、より多くの高等学校で大学評価結果を大学選びや進路指導に活用いただければ幸いです。

※「改めて大学評価について知りたい!」という方は、このマガジンの過去投稿を併せてご覧ください。