本協会の活動と広報誌の役割
皆さんは本協会の広報誌『じゅあ』を読んだことがありますか? 『じゅあ』は、主に大学関係者に向けて、本協会の活動報告や、本協会役員による巻頭言、高等教育における質保証あるいは教育活動の最新動向等を紹介する記事、編集委員によるブックレビュー等を掲載している広報誌です。年2回発行しており、今春には第70号を刊行しました。
筆者は入局から3年間、『じゅあ』の編集を担当してきました。今回のコラムでは、これまでの『じゅあ』に掲載された内容を辿りながら、本協会の活動と広報誌の役割について考察してみたいと思います。
※『じゅあ』の概要については下記の記事をご覧ください。
認知度向上に向けて
広報誌『じゅあ』は、1989年に第1号を刊行したのがはじまりです。記念すべき第1号の巻頭言には、「大学の自立と自由のために」と題し、当時の会長であった戸田修三氏によって、これからの大学のあるべき姿と本協会の果たすべき役割について述べられています。
「本協会の存在理由への理解と協力」という部分はおそらく大学関係者に向けたメッセージだと思いますが、その言葉には本協会の認知度向上に向けた広報誌刊行に対する意気込みが表れていると感じます。
また、編集後記の中で、『じゅあ』の刊行に際して「親しみ易く、開かれた、という狙いがどれほど実現できたか心許ありませんが、…」(『じゅあ』第1号 7頁)という当時の編集委員の長谷川克彦氏の言葉が綴られていますが、認知度向上を目指すとともに、本協会に対して大学関係者に親しみを持ってもらいたいという意図も込められていたことが窺えます。
当時掲載された記事を1つずつ見ていくと、巻頭言の他に、編集委員による本協会の設立経緯等を紹介するQ&Aや、会議等の開催報告、高等教育関係の書籍のレビュー、本協会の刊行物の紹介、会員大学のプロフィール等の内容となっています。こうしてみると、黎明期の『じゅあ』では、「大学基準協会とはどのような組織なのか?」という部分に焦点を当て、本協会を知ってもらう、理解してもらうことを意識した構成になっていることが窺えます。
評価の重要性の周知
1996年、本協会は大学の自己点検・評価を基礎とする「大学評価」を開始しましたが、同年に刊行された第15号では、評価における本協会の考え方が示されていました。
これ以降、本協会の評価活動の中身や会員大学の受審状況を周知していくために、定期的にその年に実施した大学評価の結果や傾向等について掲載されるようになりました。この「大学評価」を開始した背景については「特集:大学基準協会とは?(2)大学基準協会の現在」にてご紹介していますので、ここでは省略します。
本協会が実施する大学評価は、法改正により2004年から認証評価※として形を変えますが、『じゅあ』ではこれまでと変わらず評価の重要性や評価に関する大学の動向等を伝えてきました。そうした中で、内部質保証システム※の構築やその重要性について特集を組んだり大学関係者から寄稿文が寄せられるようになります。
例えば、第43号(2009年10月)では、新たな大学評価システムの構築に向けて、大学評価の目的を再確認するとともに、自己点検・評価の重要性や新たな評価基準を掲載し、本協会としての評価に対する考え方や重視する点を紹介しています。
刊行開始当時から掲載内容が劇的に変化したわけではありませんが、「大学基準協会とはどのような組織なのか?」から「大学基準協会が行う評価とは?」というように、本協会のより具体的な活動に焦点を当てた内容になっています。
※「認証評価」…文部科学大臣から認証を受けた評価機関が実施する評価のこと。すべての大学や短期大学等は、教育研究や組織運営等について、7年以内に1度評価を受けることが義務付けられている。
※「内部質保証システム」…教育をはじめとする諸活動の質を大学自らが証明し、保証するシステムのこと
より幅広い層へ向けて
近年では、大学関係者のみならず、大学や大学教育に関心のある一般の方にも興味をもってもらえるようなテーマを積極的に扱うようになってきました。例えば、大学で話題となっているテーマを取り上げ、そのテーマに精通した方々による座談会を実施し、記事として掲載しています。
もともと文章が主体の広報誌なので、もしかすると硬い印象を持たれる方もいるかもしれませんが、こうした座談会記事では、編集に工夫を凝らして、どなたにも読みやすい記事になるようにしています。例えば、座談会記事は基本的に口語体で掲載しており、他の記事よりもう少し気軽に読んでいただけるように意識しています。
実際に筆者が編集を担当した『じゅあ』をご紹介すると、第69号(2022年10月)において、大学でのデータサイエンス教育をテーマとした座談会を企画し、各大学の専門の先生方に課題や展望についてお話しいただいた内容を掲載しました。
このように、昨今の『じゅあ』は、大学関係者に限らず、高等教育に興味のある方など、より幅広い層に向けて大学に関するさまざまなテーマを取り上げるよう変化してきており、「高等教育を取り巻く環境の変化を多くの方にタイムリーに伝える」という部分を重視するようになっています。
まとめ
今回『じゅあ』を振り返りながら気付いたこと感じたことは、基本的な掲載内容は変わらずとも、その時々で本協会の活動において重要なテーマを取り上げながら、さまざまな方に興味を持ってもらえるよう、誌面での伝え方などを少しずつ変化させてきたということです。そうした中でも、「本協会を知ってもらいたい」という広報誌に懸ける熱い想いは、刊行当初から何ら変わることなく、今に受け継がれているように思います。