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広報誌『じゅあ』における「高等教育トピック」を振り返って

 本協会では、会員大学の教職員や大学教育に関心のある一般の方向けに、広報誌『じゅあ』(以下、『じゅあ』といいます。)を年2回(3月・9月)刊行しています。

 『じゅあ』では、毎号「高等教育トピック」と題し、その時々の大学教育において話題となっているトピックを取り上げ、その分野に精通した大学の教職員やその他教育関係者の声を記事として掲載しています。

 筆者は、2020年度に入局し、現在まで『じゅあ』の編集を担当してきました。私が編集に携わり始めた時期はちょうどコロナ禍の真っ只中で、各大学においてもその対応に追われている状況でした。
 こうしたことを踏まえて、私が携わるようになった2020年度以降の『じゅあ』の「高等教育トピック」では、コロナ禍において大学の教育研究活動が大きく変化している現状や、そうした状況におけるこれからの大学のあるべき姿を伝える記事を次々と企画してきました。

 この背景には、大学によって設立された大学団体である本協会として、困難な状況下にある大学に対して何かできることはないかと思ったこと、そして、『じゅあ』を通して各大学の状況やこれからの大学のあるべき姿を伝え、課題を抱える大学の一助となりたいと考えたことがありました。

 今回のコラムでは、こうした『じゅあ』の「高等教育トピック」を企画する編集者の想いをお話ししたいと思います。

 それでは、2020年9月刊行の第65号から「高等教育トピック」を見ていきます。

 2020年の夏、当時各大学ともオンライン授業を導入する等、教育活動の大幅な変化への対応に追われており、まさにさまざまな課題を抱えている状況でした。そのため、本号では、『じゅあ』に占める「高等教育トピック」の紙面を大幅に増やし、6頁に及ぶ座談会記事とともに、2つの寄稿記事を掲載することにしました。

 座談会では、「新型コロナウイルス感染症対応から見えてきたこれからの大学」というテーマを掲げ、各大学の学長であり本協会の役員でもある先生方に、自身の大学での取組み等を紹介いただきながら、オンライン教育の普及等を中心に、コロナ禍の大学の現状と課題、そして今後の展望についてお話しいただきました。
 参加者の発言を基に編集する座談会記事は、寄稿記事に比べてさまざまな情報を比較的平易な言葉で伝えることが可能であり、コロナ禍の各大学の状況をより多くの方々に知ってもらうには最適であると思い企画しました。
 一方、寄稿記事では、各大学の具体的な課題解決につながるように、今後の高等教育のあり方を考える内容や、先進的な取組みが見られる大学の事例紹介を行いました。具体的には、オンライン教育の現状を所属大学の事例や学生アンケートの結果から振り返る内容を掲載しました。

 そして2021年の夏、コロナ拡大から約1年が経過し、各大学がコロナとともに歩む時代(withコロナ時代)の教育研究活動を本格的に検討する時期に入っていきました。検討にあたり、第67号では再び座談会を企画し、この1年の大学の変化と現状を踏まえたこれからの大学像について話してもらうことにしました。

 座談会では、国・公・私立大学の学長それぞれの視点から、withコロナ時代における大学のあり方として、オンライン教育の普及を軸に、リカレント教育や学生募集、国際化対応、地域社会との連携等の観点から幅広くご議論いただきました。
 また、本号も寄稿記事を2つ掲載しました。ここでは、大学の質保証機関である本協会として、近年の大学改革では欠かせないトピックである教学マネジメント※と内部質保証システム※の構築について、コロナ禍におけるそれぞれの改革への影響を読者に伝えていく記事を掲載しました。
※「教学マネジメント」…大学が教育目的を達成するための学内における管理運営のこと
※「内部質保証システム」…大学自身が自大学の活動の質を保証するシステムのこと

 さらに1年が経過した2022年の夏、コロナ対応も落ち着きつつあったことから、第69号では、コロナ関連の記事に加え、大学への社会的要請の高いデータサイエンス教育やSDGsといったトピックについても取り上げました。

 コロナ関連の記事としては、学生支援の観点から、経済的理由により就学が困難な学生へのサポートについて、日本学生支援機構の代表者に寄稿していただきました。
 他方、近年社会的要請の高いデータサイエンス教育については、データサイエンス分野の専門家であり、各大学の教育に主導的立場で携わる先生方を集めて座談会を実施し、「そもそもデータサイエンスとは何か」といったことから今後の展望までを盛り込んだ記事を掲載しました。そのほか、大学の理念・目的を踏まえたSDGsの取組み事例の紹介記事も掲載しました。

 こうして各号の企画を振り返ってみると、本当にさまざまなトピックを取り上げてきたのだな、と思うとともに、「大学の一助となりたい」という当初の気持ちが最新号でも一貫していることを再確認できました。
 大学関係者の方には「この取組み事例は自身が所属する大学でも活かせるかもしれない」、一般の方には「昨今の大学はこういう取組みに注力しているのだな」と関心を持っていただけるような広報誌を作りたい、という気持ちがより確かなものになった気がします。

 本協会ホームページには、今回紹介した各号以外にも『じゅあ』のバックナンバーが多数あり、どなたでもご覧いただけますので、ご興味のある方は下記の『じゅあ』ページよりアクセスしてみてください。