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大学基準協会職員にアンケートしてみた!! PartⅠ

「就職?進学?」  
「進学するとしたらどこの大学にする?」

 多くの人にとって、高校3年生の進路選択は人生最初のターニングポイントと言えるかもしれません。大学の評価機関で働く職員が、大学を選ぶ際に重視したこと、参考にしたこととは? また、仕事を通じて多くの大学を見てきた経験によって、それらに変化はあったのでしょうか?
 今回初の試みで、職員にアンケートを実施したところ、以下のような結果となりました。

志望校選びで重視したもの・したいもの

Q1:(受験生のころを振り返って)志望校を選ぶときに、次の中で重視したのはどれですか?

1位 学部・学科・専攻の内容、カリキュラム
2位 
大学の偏差値
3位 
大学の所在地(大都市の大学に行きたい、自宅からの通学時間など)
   入試形態(一般、推薦等)や入試科目

(選択式、回答は3つまで)

Q2:もし、今、志望校を選ぶとしたら、次の中で重視したいのはどれですか?

1位 学部・学科・専攻の内容、カリキュラム
2位 
教育体制の充実度
3位 
修学支援・生活支援・進路支援などの支援体制の充実度

(選択式、回答は3つまで)
(※)支援体制…修学支援・生活支援・進路支援など  

≪その他意見 抜粋 
・今重視したいこと:その大学が輩出した著名人  など

≪まとめ≫

  • 「高校時代」でも、「もし、今」でも、大学選択において「学部・学科・専攻の内容、カリキュラム」が最も重視されるようです。

  • 高校時代の上位の回答から言えることは、学びたいことが学べ、自分の学力で入試を突破できそうな大学で、通学等の条件に合った大学を選択しているようです。筆者もそうであったし、なんとなく想定された結果のように思います。

  • 特に目立つのが「大学の偏差値」の回答数の変化です。仕事を通じて多くの大学の情報を知り、大学を俯瞰的にみられるようになったことで、偏差値よりも重視すべきことが見つかった人が多いことの表れかもしれません。

  • 「教育体制の充実度」「支援体制の充実度」の回答数の変化から、高校時代にはそれらに着目しなかったが、実際に大学時代を過ごして、また本協会で働いてみて、支援体制や教育体制の充実度を重視するようになった傾向がうかがえます。特に支援体制については、学生の多様化に伴って多くの大学で支援体制が充実し、修学上の悩みや就職活動等について手厚い支援を受けられるようになっていると言えます。

志望校選びで参考にしたもの・したいもの

Q3:(受験生のころを振り返って)志望校を選ぶときに、次の中で参考にしたのはどれですか?

1位 紙ベース資料(大学パンフレット、各種雑誌など)
2位 先生・両親などの意見
3位 オープンキャンパス/大学主催の説明会 

(選択式、回答は3つまで)

Q4:もし、今、志望校を選ぶとしたら、次の中で参考にするのはどれですか?

1位 オープンキャンパス/大学主催の説明会
2位 大学公式のHPの情報
3位 インターネット・SNSの情報
   (大学公式以外の動画サイトやインターネットなどの情報)

(選択式、回答は3つまで)

≪その他意見 抜粋
高校時代に参考にしたもの:偏差値表、おぼろげで形のない世間の評判というもの

≪まとめ≫

  • 回答数の変化から「高校時代は参考にしたが、今は参考にしないもの」は「先生・両親等の意見」「紙ベース資料」と言えそうです。高校時代は、人生経験が豊富で信頼のおける先生や両親のアドバイスを参考にしたけれども、大人になるにつれて自分で判断できるようになったことが理由にあると思われます。

  • 同じく両者の変化から「高校時代は参考にしなかったが、今、もし志望校を選ぶとしたら参考にしたいもの」は「オープンキャンパス/大学主催の説明会」、「大学公式のHPの情報」、「インターネット・SNSの情報」であると読み取れます。筆者は高校生の保護者世代ですが、大学選択時にインターネットは普及していませんでしたし、オープンキャンパスはおろか、大学主催の説明会も殆どなく、大学見学は校舎を外観から眺めるか、学園祭に潜り込むくらいでした(一説によると、オープンキャンパスは1990年代後半頃から一部の大学で始まったと言われています)。筆者と同年代以上の方は、同じような状況で大学選びをしていて、情報に溢れた今の大学選びを羨ましく思っているかもしれませんね。そういえば、情報源は紙ベースだったなあ…。

  • 「もし、今志望校を選ぶとしたら参考にすると思うもの」の第4位は「大学評価結果」でした。高校時代には大学評価を知らなかったものの、知っていれば参考にしたかったという思いが多くの職員にあるように思います。大学評価は大学の教職員やマスコミ等の外部有識者が第三者の視点から評価しており、各大学の優れた点だけでなく課題点にも触れられているのが特長です。

 各大学の「大学評価結果」は本協会のHPで、誰でも確認することができます。また、本協会noteの過去の記事も参考にしていただければ幸いです。

 更に上の2つのアンケートに関連して、自由記述で聞いてみました。

大学に対する見方の変化

Q5:本協会で働くようになって、ご自身の大学に対する見方が変わったと感じる部分はどこでしょうか?(自由記述)

本協会で働き始めてから、建学の精神に基づいて各々の大学が特色のある活動を行っていることを知り、偏差値とせいぜい学部名で志望校を決めていた高校時代の自分が凄く勿体ないなと思うようになった。

昔は、ほぼ偏差値でしか大学を見ていませんでした(そしてそれで優劣をつけていた)が、本協会で働くようになって、大学にはそれぞれ理念があり、その実現のためにたくさんの努力を重ねていることが見えるようになりました。今はそのことに対しリスペクトしています。

客観的な視点が加わったのはよかった。これまでは学生目線、想像ができたとしても教員目線に留まっていたが、そうではなく第三者の視点で、他の大学のことも視界に入っている状態で大学を俯瞰できるようになったのは良かった。

 ◆◆次の回答からは、本協会での仕事を経験してのご自身の大学観の変化、大学評価のリアル、そして高校生へのメッセージも読み取れると思います。

高校生の時に見えていた「良い大学」と、実際の「良い大学」は必ずしも一致しないということを感じます。高校生の時には、ブランドや、学部・学科名やパンフレットから読み取った浅い「大学で学べること」、立地・規模などの狭い視野から大学を判断していました。しかし、本協会で働くなかで、自分が知らない大学でも、規模が小さくても、「自分がもう一度受験するとしたらこの大学に行ってみたいな」と思う大学に出会うことがありました。それは、大学評価の実地調査で直接見聞きした先生方の様子から感じた大学への熱意であったり、小規模大学ならではのきめ細かな学生へのサポートであったりと、その大学の個性が光っている部分を見たからでした。大学を外から見るだけではなかなか分からないことであり、貴重な経験をしていると感じます。

≪まとめ≫

  • ここでは、「本協会で働くようになって、大学の見方が変わった」記述が多く見られました。「大学の理念」や「建学の精神」などに言及する回答が多かったのですが、これには理由があります。本協会の評価では、大学の「理念・目的」を評価基準の最初に掲げており、評価においてこの部分を非常に大切に捉えています。こうしたことから、多くの職員が、大学にとって理念・目的や建学の精神がいかに重要であるかに気づいていると言えます。

  • 職員の多くは業務上、複数の大学を外部から見る経験をします。自身の大学時代の経験を振り返りながら、多くの大学を俯瞰することで、それぞれの大学の個性や長所に気づかされることもあるかもしれません。

  • 「昔は、ほぼ偏差値でしか大学を見ていなかった」という回答がありました。アンケート結果でも高校時代に重視したものの上位に「偏差値」が選ばれています。入試を突破する必要がある以上無視はできませんが、それだけに捉われずに志望校を選んでほしいです。

大学に行く意義

Q6:高校生に「大学に行くとどんないいことがあるのか?」「大学に行く意味は何か」と聞かれたら何と答えますか?(自由記述)

学部にもよるが、学びたいものを自分で選び、学んでいけること。損得なしに人間関係を広げていけるところ。インターンシップ等を通じて社会にも触れることができるところ。

学業にせよそれ以外にせよ、そこにはたくさんの刺激があり、それを享受する(そして無駄にもできる)十分な時間が与えられることに意味があると感じます。未熟な自分が1人で生きていく準備をする時間が与えられるわけで、できればあわせて一人暮らしも始めてほしいと思います。

自身が高校生の時は、大学入学はゴールだという感覚が強かったが、大学入学はあくまでもスタートであるということを伝えたい。大学に行けば視野が広がる、人間関係が拡がる、人生経験が拡がる、勉強だけでなく、専攻分野だけでなく、どうかアンテナをあちこちに張り巡らせて、スポンジのようになんでも吸収しながら過ごしてほしい。

大学に行くことによって、自分の可能性を広げることができる。

自分の興味を掘り下げられる期間、自分自身と向き合える期間であると答えるかなと思います。

多様な価値観に触れることができ、きっと人生がより豊かなものになるはずです。

まず、大学に入るときにやりたいことが決まってなくてもいいということを伝えたい。そして、長い人生の中で、これほど自由に時間を使える機会はそうないので、4年間で多くの人と関わり、広い視野を養うことが大切だと思う。

大学では、自分のやる気次第で、知識を深め、さまざまな経験を積むことができ、自分の視野を広げてくれます。人生には、岐路に立たされたり、自分の考えで判断を下さなければならない場面がたくさんあるので、大学時代に身に付けた考える力や判断力は、その後の人生を豊かでより良いものにするうえできっと役に立つと思います。

≪まとめ≫

 自身の学生時代を振り返り丁寧に言葉を紡いだ、後進へのエールでもあると思います。十人十色でありながら、それぞれに大学に関する業務に就く職員の、大学へのリスペクトも感じられました。理念や建学の精神に触れ、大学を理解しその上で評価してきた本協会職員の生の声であるといえるのかもしれません。

~おわりに~

 いかがでしたか?
 選択式のアンケート結果と自由記述を紹介しました。
「本協会で働くようになって、ご自身の大学に対する見方が変わったと感じる部分はどこでしょう?」という設問では、本協会での仕事を通じて、多くの職員に意識の変化があったことを感じました。大学卒業後も大学に関わるやや特別な環境で醸成された「大学観」ともいえるかもしれません。
 このアンケート結果が、高校生のみなさんの進路選択の情報の一つになれば幸いです。