オープンキャンパスで、大学を肌で感じよう!【静岡県立大学編】|1000分の1の出会いのために #2
このマガジンの第1回目の記事で、大学を選ぶためには、広い視野を持ちいろいろな情報にあたり、比較検討してほしいことをお伝えしました。大学を知る方法の1つとして「オープンキャンパス」が挙げられますが、オープンキャンパスに行くとどのようなことがわかるのでしょうか。そして、大学は受験生に何を伝えたいと考えているのでしょうか。
今回は、静岡県立大学国際関係学部のオープンキャンパス(2024年8月9日(金)開催)についてご紹介します。地震の影響で現地取材がかないませんでしたが、後日、運営に携わった先生や学生にインタビューしました。
※静岡県立大学では、学部ごとにオープンキャンパスを開催しています。
静岡県立大学のオープンキャンパス
静岡県立大学国際関係学部では、総勢27名の学生による「学生オープンキャンパス委員会(略称SOC)」(以下、「SOC」といいます。)を中心に、教職員と学生が協働し、企画、運営しています。今回は、国際関係学部オープンキャンパス委員会の森先生と静岡県立大学国際関係学部学生オープンキャンパス委員会(SOC)学生代表及びスーパーバイザーの2名の学生にインタビューしました。
オープンキャンパスで開催した主なイベント
――オープンキャンパスは大盛況だったようですね。お疲れさまでした。
杉山:今は、すごくほっとしています。緊張はしない方なのですが(笑)、さすがに前日は緊張し、うまくいくかなと不安にもなりました。でも「今考えても仕方がない、なんとかなるよ」と切り替えました。当日、私は全体を統括する立場だったので、何かあれば、私が走り回ればいいかと思っていました。
――オープンキャンパス委員会の代表をされて、いかがでしたか?
杉山:代表の仕事は「進捗状況など、全体を俯瞰する仕事」、これに尽きると思います。今年度は、前代表の方の助言もあって、新たなチャットツールを導入し、各イベントの仕事がどこまで進んでいるのかを把握できるようにしました。
私は小学校4年生から高校生までサッカーをやっていたのですが、仲間と色々ぶつかりながら、最終的にはチームとしてまとめるという経験が、今回も生かされたのではないかと思います。みんなをまとめるためには、みんなと話をすることが必要ですが、私は人とコミュニケーションを取るのが好きですし、人前に立って話をするのも苦ではないので、代表になって大変だと思ったことはほとんどないです。
――杉山さんが高校生の時のことをお伺いします。静岡県立大学のオープンキャンパスに行きましたか?
杉山:私が高校3年生の頃はコロナ禍で、静岡県立大学のオープンキャンパスはバーチャル開催でしたが、他大学の対面のオープンキャンパス2つに足を運びました。実際のキャンパスや周辺の環境を確認して、どんな大学生活が送れるかをイメージしたかったからです。
――オープンキャンパスを運営する上で、高校生の頃にオープンキャンパスに行った経験は役立っていますか?
杉山:はい、高校生だったらどんなことが知りたいかを考え、企画に組み込むことができたと思います。当日、高校生は少し不安な気持ちで来場するのだろうな、とか、気持ちを考えることもできました。
――オープンキャンパスに行く意義はどんなことだと思いますか?
杉山:一番の意義は、実際に学ぶ大学を見たり、「留学トークライブ」「模擬授業」などのイベントに参加したりすることを通じて、大学を深く知ることができることだと思います。本学のオープンキャンパスの「留学トークライブ」「模擬授業」は20分サイクルの入れ替え制で、自分が行きたいところを3つ、回ることができます。
――最後に、高校生にメッセージをお願いします。
杉山:興味がある大学があったら、オープンキャンパスに行ったほうがいいと思います。「興味がある大学」が「行きたい大学」になるには、実際に行って、その大学を肌で感じることが大事です。それがモチベーションにもなると思います。
静岡県立大学では、インスタやXなどでも情報を発信しているので、今回オープンキャンパスに参加できなかった高校生がいたら、ぜひSNSを見てくださいね。
――1年生からSOCに所属されているそうですが、委員会に参加したきっかけや、経緯を教えてください。
高口:僕は高校時代もオープンスクールの企画代表をしていたので、静岡県立大学のSCOに入ったのはごく自然な流れだったと思います。
――去年、代表を務めて苦労したことはありますか?
高口:本学のオープンキャンパスは、僕が1、2年生の時はバーチャル開催で、3年時、代表を務めた年に、対面開催に戻りました。その時は経験も引き継ぎもマニュアルもなかったので、大変苦戦しました。人の流れが想像しづらかったので、たくさんの人をどう誘導するかについては、悩みました。
――今年はスーパーバイザーとして、去年とは違った立場で活動に携わったそうですが、活動していく上で意識してきた点はありますか?
高口:スーパーバイザーとして、下級生をフォローして、ボトムアップしたつもりです。僕は高校生のころからユニセフなど様々な活動に携わり、責任のある立場も経験しました。その経験は自分を成長させてくれたので、他の人にも早いうちから責任ある立場を経験してもらいたいと思っています。そこで、この活動でも、低学年のメンバーをチームリーダーに指名しました。「怒られるから」、「何かあったときに責任を取ることになるから」といった理由で難色を示されることもあったのですが、「何かあったらその時は僕が謝るから、大丈夫だよ」と言って背中を押してきました。
スーパーバイザーもそうですが、リーダーという立場だからこそ見えるものもあるし、気が付くこともあると思います。だから、1年生の時からリーダーを経験してほしいと思うのです。
――社会に出てからも役立つ、貴重な経験をされてきましたね。
ところで、高口さんは高校生のとき、静岡県立大学のオープンキャンパスに行きましたか?
高口:はい。僕が高校生の頃はまだコロナ禍前で、対面での開催でした。オープンキャンパスに行ってみようと思った理由の一つに、大学の設備、というか、大学がどんなところか見たいという思いがありました。静岡県立大学のオープンキャンパスは模擬授業が多く開講されているので、出身の熊本県から参加しました。
まず、大学で一番広い教室である大講堂でのオリエンテーションに参加したのですが、その時の衝撃は忘れられません。高校の教室とは、迫力と規模が違いました。現在は感染対策もあり、オリエンテーションは動画で見ることになりましたが、「高校になくて、大学にあるもの」が高校生には強く印象に残ると思うので、そういった意味では、大講堂でのオリエンテーションが無くなって残念です。
――静岡県立大学のオープンキャンパスのイチオシの企画は何ですか?
高口:模擬授業はぜひ受けてみて欲しいです。僕もそうでしたが、高校の授業とは全然違って、アカデミックな雰囲気を感じることができると思います。大学の授業は高校までの学び方と全然違います。例えば歴史だったら、高校までは流れを覚えて年号を暗記して…という学び方になりますが、大学では、バックグラウンドにある社会問題や民族対立を掘り下げていくものです。僕は大学の掘り下げる授業の方が好きだったので、大学での学びが楽しみになりましたし、受験勉強のモチベーションにもなりました。
――高校生に向けて、メッセージをお願いします!
高口:今、高校生の人たちは、コロナ禍での生活やSNSの発達もあり、リアルに人とつながる経験が少ないのかなと思います。だからこそ、ぜひ、興味のある大学には実際に足を運んで、自分から学生や教員に話を聞く経験をしてほしいと思います。インターネットで大学のことを調べることもできますが、それよりも直接聞いて得た情報は、きっと印象に残ると思います。そのうえで、実施にここで勉強したいと思える大学に行くのがよいのではないでしょうか。
――オープンキャンパスにお伺いできず、本当に残念でした。当日は何人くらい来場したのですか?
森先生:本学のオープンキャンパスは、事前予約制で、前半250名、後半250名の計500名の高校生をお迎えしています。前日の地震の影響か、キャンセルが少しありましたが、ほぼ例年並みの参加率でした。
――当日の会場の様子を聞かせてください。
森先生:まず模擬授業ですが、高校生からの質問も出るなど、活気にあふれていたと聞いています。国際関係学部ですので、外国人の教員による模擬授業は例年特に人気があります。
学生の発案で、今年から新たに留学の個別相談ブースを設けたのですが、大変好評でした。留学相談、受験相談、学部相談などの相談系の企画では多くの方が順番待ちをしていました。
――学生が「高校生がオープンキャンパスで望むことは何だろう」と考えたイベントが、高校生のニーズに合ったと言えますね。
学生から、オープンキャンパスをよりよいものにするための提案が、他にもあったのでしょうか?
森先生:学生からはさまざまな提案が出され、オープンキャンパスが年々良くなってきていると思います。例えば、人気の高い「留学トークライブ」を一回り大きい教室で開催しようという提案がありました。それによって、今年はより多くの希望者に参加していただくことができました。
それから、「高校生に大学や学生生活を理解してもらえるような展示をしたい」という学生の視点が生かされ、「国際関係学部入門」では、卒論や就職先のデータ、あるいは学生の1日が分かるポスターなどを新たに展示することにしました。
――学生が主体となってオープンキャンパスを開催することに、どんな利点があると感じていますか?
森先生:開始当時の担当教員からは、大学にとって「財産」「宝」である学生をアピールできるようなオープンキャンパスをしたい、そのためには学生に主体的に関わってもらうのがいいと考えて始めたと聞いています。来場した高校生や保護者も「学生と話せてよかった」と言ってくださいますし、学生が主体となってオープンキャンパスを開催することで、本学の学生のすばらしさが伝わるのではないでしょうか。
それから、学生にとっても学びの場になると思います。参加して、経験して初めて分かることはたくさんありますし、コロナ禍で高校時代を過ごしてきた今の1、2年生にとっては、皆で集まって議論をして決めていくことも貴重な機会です。また、教員との関わり方や、パソコンの操作をはじめ、メールの書き方などビジネススキルのようなものを学ぶチャンスでもあります。
「高校生の時にオープンキャンパスに参加して得る物があったので、今後は作る側になって、受験生の役に立ちたい」と言って委員会に入ってくれる学生もいるので、そういった意味でも学生が主体となるオープンキャンパスの影響は大きいのだろうなと思います。
取材を終えて
近年、学生が携わるオープンキャンパスが増えているのは、どうしてなのでしょうか?このインタビューの中に、その答えがありました。学生は大学にとって「財産」「宝」で、大学の中心にいるのは、教員でも職員でもなく、キラキラ輝く学生なのですね。
高校生は、そんな学生の姿を見たり、話を聞いたりして、大学生になった自分の姿を思い描くことができるのだと思います。インタビューに答えてくれた学生も、委員会でコミュニケーションを取りながら活動した経験が生きているのか、私たちの言葉の意図を考えながら、自分の言葉で丁寧に答えてくれました。
オープンキャンパスへの参加が高校1,2年生の夏休みの宿題になっている学校もあるようですが、宿題のためという受け身の姿勢ではなく、五感をフル活用しながら、大学のことを知ろうとする積極的な気持ちでオープンキャンパスに参加してもらいたいと思いました。
静岡県立大学のオープンキャンパスは、相談ブースで学生と話したい高校生が後を絶たないと聞きました。来場した高校生も「宝」に触れて、自分もそうなりたいとあこがれ、次の「財産」となる、そういう循環が大学をますます盛り上げていくのでしょう。
(インタビュアー)総務部総務企画課 蔦美和子、串田藍子、井上陽子