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大学基準協会が公益財団法人なワケ

 突然ですが、大学基準協会は「公益財団法人」です。なんとなく聞いたことがあるような、この「公益財団法人」ですが、世間一般の人はあまり詳しく知る機会はないかもしれません。今回は、この公益法人制度と、なぜ大学基準協会が「公益財団法人」なのかを、できるだけ簡単に、ゆる~くお話ししたいと思います。

大学基準協会の職員は公務員?

 結論から言うと、公務員ではありません。「財団法人」や「社団法人」というと、何か公的な機関のように思われるかもしれませんが、営利目的でない事業を行っていたり、行政から認可を受けたりしているだけで、ベースは民間組織です。したがって、経営が不安定になる時もあれば、解散することもあります。昔から、公務員と言えば安定したお堅い職業というイメージがありますが、残念ながら公益法人の職員にはそれは当てはまりません。まあ、本家の公務員にとっても、今はそんなに気楽な時代ではないと言われていますよね。

「財団法人」や「社団法人」には種類がある

 2008年に、いわゆる「公益法人制度改革関連3法」が施行され、それまで「公益法人」と言われていた財団法人と社団法人が、大きく2つに区分されました。すなわち、「公益財団法人」及び「公益社団法人」と、「一般財団法人」及び「一般社団法人」の2つです。頭に「公益」とつくもの(こちらは引き続き「公益法人」と呼ばれています)については、行政の認定が必要になりますが、「一般」とつくもの(こちらは俗に「一般法人」と呼ばれます)に関しては、これまでよりも設立が容易になりました。いずれも非営利目的で活動することに変わりはないので、国がいうところの、「民による公益の増進」のため、裾野が広げられた格好です。


参考資料:民による公益の増進を目指して
公益認定等委員会事務局 作成
こちらよりご覧いただけます

 「公益法人」は税制の優遇などがあり、また、その公益性について行政からのお墨付きというイメージが付与されますが、運営には厳しい基準や制限が設けられています。一方で、「一般法人」にはそれらがない分、比較的自由に運営が可能ですが、その代わりに税制上のメリットは小さく、また社会的信用力も「公益法人」に比べれば劣るとされています。
 2008年に関連3法が施行された際、それまでの財団法人と社団法人とは、このいずれの道を選ぶのかの岐路に立たされることになりました。もちろん、大学基準協会もその一つでした。

大学基準協会の選択

 「公益法人」と「一般法人」のいずれに移行するのかについては、理事会で協議され、そのための検討委員会も設けられたようです。結果として、大学基準協会は「公益財団法人」として歩む道を選択しました。税制上のメリットというよりも、自分たちが行っている事業の公益性や、その運営の透明性を社会にアピールするという部分に重きが置かれ、また、その自負も強かったようです。筆者は、この検討が行われていた頃にはまだ本協会の職員ではありませんでしたが、後に当時の会長とお話しをした際、「自分たちが行っている事業のことを考えれば、やはり『公益法人』しかないだろうと考えた」という趣旨の発言をされていたのが記憶に残っています。大学の質を社会に対して保証していくということ、また、評価機関として各大学の取組を適正に評価していくということ。そのことが社会全体の利益につながるのだという強い意志と、その担い手である自分たちの振る舞いはきわめて公正なものでなくてはならないのだという覚悟が感じられる言葉でした。
 かくして、大学基準協会は無事に内閣府からの認定を受け、「公益財団法人」へと相成ったわけですが、「公益法人」は一度認定されれば終わりというものではありません。認定の基準から外れていないことを証明するため、毎年度、定められた様々な書類(これが結構大変なのです)を提出するほか、定期的に行われる立入検査に対応しています。ちなみに、直近の立入検査では、最後に調査官から「ほぼ完璧と言える」といったコメントをいただき、嬉しさ・・・よりも安堵感でその場に溶けそうになった思い出があります。

「公益法人」運営の難しさと今後

 一方で、「公益法人」に求められる基準のうち、特に財務に関するものについては、かなり厳しいものがあると個人的に感じています。特に「財務3基準」と呼ばれるものについては、税制の優遇を受けている我々が不必要に資産を蓄えることのないようにとのメッセージだとは理解できるものの、特に収支相償(端的に言えば、「収支はゼロか赤字にしなさい」というもの)や遊休財産の保有制限(端的に言えば、「1年分の事業費以上に蓄えてはいけない」というもの)などは、この変化と不確かさの時代の組織運営においては、かなり難しいものがあります。新型コロナウイルスの蔓延や国際情勢の悪化に伴う物価高など、こうした事態を事前に想定することは不可能に近く、強すぎる制限は組織の柔軟性を奪い、大きな変化に耐えられない脆い体制を作りあげてしまう可能性があります。そこまで大きな話でなくとも、少しでも経費を安く済ませようという普遍的な組織の努力が、収支相償があるがためになされないという馬鹿馬鹿しい話も聞こえてきたりもします。
 このような論点は、実は現在の制度開始時から一部では指摘されており、より柔軟な運営を認めるための改善が進められています。このほど、有識者会議による最終報告がとりまとめられましたので、今後は当該報告に沿って法制化をはじめとする改革が着実に進んでいくものと思います。

おわりに

 「できるだけ簡単に、ゆる~く」と言ったのに、思いのほか難しい言葉が並ぶ記事となってしまいました。大学基準協会は、その事業が社会全体の利益となることを望み、その運営がどこから見ても恥ずかしくないものとなるよう、「公益財団法人」として活動しています。我々の活動が、社会のよりよい未来につながることを信じて、今日もせっせと仕事に励みたいと思います。

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