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「評価結果の公表」は何のため?

大学基準協会公式note

 このコーナーでは、70年以上にわたる大学基準協会の歴史が詰まったアーカイブズ資料の一部を紹介しながら、本協会の職員がこれまでの活動やその裏にある想い等を考察し、みなさんにお伝えしていきます。

 このコラムをご覧になっているみなさんは、大学基準協会(以下、「本協会」といいます。)の認証評価結果を読んだことがありますか?
 私は、入職するまで評価結果を読んだことがなく、入職後に評価結果の作成に携わるようになってからは、毎年度公表している評価結果を、誰が見ているのだろうか?活用されているのだろうか?と疑問を持つようになりました。
 今回のコラムでは、いつから評価結果を公表するようになったのかを知ることを通じて、「評価結果の公表」が目指すところを探ってみたいと思います。

 はじめに、評価結果の公表に関する位置づけを確認します。
現在、評価結果の公表は、学校教育法で本協会のような認証評価機関に対する義務として定められています。

学校教育法第110条第4項
認証評価機関は、認証評価を行つたときは、遅滞なく、その結果を大学に通知するとともに、文部科学大臣の定めるところにより、これを公表し、かつ、文部科学大臣に報告しなければならない。

 このように、法令で義務づけられているから公表している、と言ってしまえばそれまでなのですが、あえてそこに至るまでの経緯を見てみたいと思います。

 本協会の創立から2003年度末までの歴史を記した『大学基準協会55年史』を読んでみると、評価結果の公表には、以下のような大まかな流れがあることがわかりました。

①適格判定時代
 維持会員(現:「正会員」)校向けの冊子『会報』に、委員長の所見や大学名等を掲載

②1996年~大学評価システムの導入
 「加盟判定審査」(新たに大学基準協会の維持会員になろうとする大学に対する審査)に合格した大学と、「相互評価」(既に維持会員になっている大学に対する評価)の認定を受けた大学名を主に公表

③2004年~認証評価制度
 ホームページで評価結果(全文)を公表(現在に至る)

 これから、それぞれ詳しく見ていきたいと思います。

①適格判定時代

 適格判定について記した本では、「適格判定のもたらす利益」として、「一、学生やその両親がどの大学に入学すべきよい大学かを決めるのに役立つ。」「二、高等学校がどの大学がその生徒に推薦すべきよい大学であるかを決めるのに役立つ。」「三、学生が一つの大学から他の大学に時間と修了証明を損せずに転学することを容易にする。」等、適格であると判定された大学が明らかになることによって、もたらされる利益が示されていました。
 ただし、当時は、維持会員校向けの『会報』で、その年度の審査全体を通じての委員長の所見や大学名等を掲載していた程度であり、社会に対して詳細な結果を公表することはしていませんでした。

(『会報(旧)』第13号、1952年8月)

②大学評価の始まり

 その後、1996年には、本協会で大学評価システムが導入され、新たに大学基準協会の維持会員になろうとする大学に対する「加盟判定審査」と、既に維持会員になっている大学に対する「相互評価」が行われました。
 1997年にはその結果について記者会見が行われましたが、評価結果の公表をめぐり、本協会と一般の方々との間で認識のずれがあったことが、記者会見の様子から分かります。

大学評価終了後の3月31日には本協会会議室において文部記者会と専門誌等の記者を集めて記者発表を行った。大南相互評価委員長と吉田判定委員会副委員長から発表された内容は、大学評価のプロセス、組織体制といった概要と、加盟判定審査に合格して維持会員となった大学名および相互評価を受けた維持会員名であったため、出席した一般紙記者から、各大学に対する評価の内容、特にランキング可能な数値で公表すべきであるとする批判的意見が出された。

(『大学基準協会55年史』505頁)

 これに対して、本協会側からは「大学基準協会が目指す大学評価は、大学の改善向上を支援するためのものであり、その評価の内容については当該大学にのみ通知すべき」であり、社会には「大学基準協会の審査・評価を信頼して維持会員となった大学名と相互評価を受けた大学名の公表をもって、その大学の活動に信頼をおいてほしい」「一部の数値のみを公表することは、大学を機関全体として評価した結果をあらわすものではなく、その数値のみが独り歩きする危険もある」等の説明がなされました。
 しかし、専門誌の記者には好意的に受け止められたものの、一般紙の記者には理解されず、「ほろ苦い」記者発表となったそうです。
 協会としては、意図をもって公表しないとしていたものの、理解されなかった困難さが伺えます。

 また、評価結果の公表に関しては、加盟判定審査を受けて大学基準協会の維持会員になろうとする大学やすでに維持会員である大学のために作成された『大学評価マニュアル』においても、「新たに維持会員校となった大学名並びに相互評価を受けた大学名は、大学基準協会の公的刊行物である『会報』を通じて明らかにされるほか、新聞その他の媒体を通じて社会に公表される」「大学基準協会は、加盟判定審査や相互評価を受けた大学に対して行った『勧告』や『助言』、『参考意見』の内容を社会に向けて公表することはない」と書かれていました(『大学評価マニュアル』80、83頁)。

 このように、評価結果を公表しなかったのには、以下のような理由がありました。

協会が、加盟判定審査や相互評価を通じ、大学に対する改善・改革のための支援を行い、各大学の自己点検・評価の有効性を保証するという任務を全うするためには、何よりもまず、大学自身に自発的に現状分析を求め長所と問題点を摘示してもらい、必要な改善方策を提示してもらうことが不可欠である。しかしながら、本協会が大学評価を実施するにあたり、大学が提出した資料を協会の側で公表するとすれば、大学に長所と問題点を余すところなく明らかにしてもらい、これをもとに当該大学に必要な勧告や助言などを行うという協会の大学評価の大きな目的が達成されないことも、場合によっては危惧されないわけではない。

(『大学評価マニュアル』82~83頁)

 つまり、公表を前提とすると、問題点などを余すことなく率直かつ真摯な自己点検・評価が大学において行われない恐れがあるため、評価結果の公表を見送ったということです。

 さらに、本協会で大学評価システムが動き始めた数年後には、社会からも、評価結果公表につながる動きがみられました。1998年に発表された「エコノミストによる教育改革への提言」では、評価過程で得られた情報や評価結果を消費者に提供することにより、消費者自身が適切な「評価者」となりうる素地が整えられることに大きな意義があるとの内容が示されています。

③認証評価制度の導入

 そのような動きのなかで、2002年には中央教育審議会から「大学の質の保証に係る新たなシステムの構築について(答申)」が出され、その趣旨に概ね沿う方向で、2004年から認証評価制度が始まりました。
 冒頭に触れたように、認証評価機関に対して、評価結果そのものの公表が求められるようになったのはこの時です。
 本協会でも、2004年度からの評価結果は、全文をホームページで公表しています。

 2002年の答申では、認証評価機関が、自らが定めた基準に基づいて大学を評価し、「その基準を満たすものかどうかについて社会に向けて明らかにすることにより、社会による評価を受けるとともに、評価結果を踏まえて大学が自ら改善を図ることを促す制度を導入する」ことや、「評価結果やこれに対する社会の反応を踏まえて大学が自らの改善につなげるという、言わば『社会』を意識したプロセスも、これらの教育研究の改善のための循環過程の一環として導入することが必要である」ことが示されていました。

 ここまで、評価結果の公表に至るまでの経緯を見てみると、やはり、認証評価制度が導入されたことが大きな要因であったことが分かります。

 ただし、本協会内においても、評価結果の公表について、認証評価制度が導入される以前から検討されていたことが分かる資料があるため、この点も触れておきたいと思います。
 1999年から「本協会あり方検討委員会」で検討されて作成された『大学評価の新たな地平を切り拓く(提言)』において、大学評価とその結果の公表方法について提言がなされていました。
 ちなみに、この提言の記者発表には、20名近い記者が参加し、「社会的に責任のある公表の方法とは具体的に如何なるものなのか」等、多くの熱心な質問がなされたといいます。

評価結果の公表を本協会の大学評価の制度的枠組みの中にどう組み込んでいくかの検討に当っては、評価の透明度を一層高めていくという社会的要請に対する対応と、大学との信頼関係の上に立って評価プロセスを運用していくという本協会の従来からの基本姿勢との間で調整を図ることも必要である。・・・対社会関係では、従来においても当該年度に大学評価を受け合格した大学名と大学評価の概況等を公にしていたが、さらに一歩踏み出し、これまでのものを一層、具体化したものを公表するなど社会的に責任を負うことのできるようなものを積極的に公にしていく必要がある。

(『大学評価の新たな地平を切り拓く(提言)』87頁)

 ここまで見てきて、社会に対して評価結果を今のような形で公表するようになった直接的なきっかけは、認証評価制度の導入により、評価結果の公表が義務づけられたことだと分かります。
 しかし、それまでに本協会内でも、公表のあり方を模索していたことも分かりました。
 そして、評価結果を公表するという行為の背景には、本協会と大学の間だけでのやりとりではなく社会の目が加わることにより、評価の透明度を高めていくことのほか、更なる大学の改善・向上につなげていく狙いがあることが見えてきました。

 本協会では、評価結果そのものの公表に加えて、評価結果の読み方を解説したり、各大学の優れた取り組みを検索・閲覧できるようにしたりするなど、評価結果をより多くの方に認知・活用していただけるように取り組んでいます。
 これからも、これらの取り組みが、評価結果を公表している狙いである大学の改善・向上につながるものとなるよう、一層努めていきたいと感じました。 

(評価事業部評価第1課 新海史紗)

注:引用箇所の一部の太字表記については、執筆者の意向で太字にしており、実際の原文の記載とは異なります。
文中の『大学評価の新たな地平を切り拓く(提言)』は下記ページに掲載しています。

会員大学におかれましては、下記ページより『会報(旧)』を閲覧することが可能です。

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