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(1)大学基準協会の成り立ち

 このコーナーでは、「大学基準協会とはどのような団体なのか?」という疑問を深く掘り下げ、本協会の成り立ちや取組み等について迫っていきます。
 本協会の原点を知ることで、私たちが今も大切にしている大学への「想い」がわかります。
 第1回目は、昨年度入局した本協会の若手職員が事務局長に、「大学基準協会の成り立ち」についてインタビューしました。

本協会の設立の経緯

――大学基準協会はどのようにして設立されたのでしょうか?
工藤事務局長(以下、「工藤」):戦後の日本では、アメリカの占領軍が日本のこれからの教育の方向を大学関係者に指導していました。そうした中、アメリカには「Accreditation Association」という、大学関係者によって大学を評価し、各大学がより良い教育研究活動を展開できるよう支援している団体があることがわかりました。この団体が大学基準協会の出発点となります。
 このことを受け、「今後の日本の大学教育をより良くしていくために、大学の評価を行う団体を作ろう」という経緯で、46校の大学が発起校となり、大学関係者の総意に基づき、1947年7月8日に本協会が設立されました。

沿革サムネイル3大学基準協会旧社屋

(1959年に財団法人としての設立許可を受けた当時の社屋)

交通アクセス候補2(大学基準協会ビル)

(現在の社屋)

――なぜ「大学基準協会」という名称になったのですか?
工藤:『大学基準協会十年史』によると、初めは「Accreditation Association」を「大学基準適用協会」と訳し、本協会の名称に考えていたようです。
 当時、大学のあるべき姿を「大学基準」にまとめ、これを大学に適用して評価するというアクレディテーション(Accreditation)の原理を、そのまま訳されたのでしょうね。

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(『大学基準協会十年史』より引用。右ページ8行目以降に名称について言及されています。)

 他にも、「基準大学協会」という名称にしてはどうかという意見もありました。ここでは、「基準」に適合した「大学」の集まった「協会」であることを示したかったと思われますが、むしろ、協会を構成する会員大学の集合体であることを示すことよりも、「大学基準」を常に高みを目指して改善し、この基準を適用して大学をより良い方向に導いていくという「協会」の使命を強調すべきとの考えから、最終的に、「大学基準協会」という名称となりました。

――数ある大学団体の中で、本協会の特徴はどのようなところにありますか?
工藤:様々な大学の関係団体がありますが、そのほとんどが大学の設置形態や教育の専門分野ごとなどに設置されています。その中でも、冒頭で触れたとおり、本協会は国・公・私立大学により設立された団体です。本協会には数多くの評価委員会や調査研究のための委員会が設置されていますが、そこには国・公・私立大学の多くの教員・職員の方々が関わっています。そういう意味では、本協会は、様々な設置形態や専門分野の枠を超えて、大学について話し合う団体でもあるので、このような点が本協会の大きな特徴であるかもしれません。

大学基準協会が大切にしている考え方
(=大学への「想い」)とは?

――大学基準協会が70年以上にわたり、目的や精神を変えずに活動できている理由は何でしょうか?
工藤:本協会の設立に携わった方々には、戦前・戦中の大学の独善性と官僚制を克服し、大学の民主化と水準向上を図っていくという、戦後の新しい大学(新制大学)に対する強い想いがありました。こうした想いは、本協会に関わってきた大学関係者に受け継がれ、大学の水準や質の向上を図っていくための基準を作り、その基準を大学に適用していく(大学を評価していく)ということが、連綿と行われてきました。
 本協会は設立時に、「会員の自主的努力と相互的援助によって、わが国における大学の質的向上を図る」という目的を掲げました。「質的向上」は、第一に大学自らが努力して質を高めていくこと、そして、そのことを前提にしながら、大学がそれぞれ相互に協力し合って質の向上を図っていくことが重要であること。そのようなことが、この目的に込められています。この目的は70年以上経った今も大学関係者に支持されており、現在もこの目的のもとで事業を展開しています。

――本協会の設立に関わった方々の高等教育に対する考え方とは具体的にどのようなものだったのでしょうか?
工藤:例えば、大学は画一化されるべきではなく、大学の個性を尊重していくことが重要であると捉えられていました。各大学には建学の精神や使命・目的があり、評価においても一つの物差しでは測るべきではない、その特色を尊重して評価していくことが大切であると考えられていました。
 現在の大学基準の最初の条項には「理念・目的」が設定されており、こうした考えは今日でも大切なものとして受け継がれています。

――設立時に掲げた目的や精神が、現在の本協会の事業においてどのように活かされていますか?
工藤:大学は「ディプロマ・ポリシー(学位授与の方針)」、「カリキュラム・ポリシー(教育課程の編成・実施方針)」及び「アドミッション・ポリシー(学生の受入れ方針)」という3つのポリシーに沿って教育を展開しています。大学は実際にポリシーに沿って教育が行われているのかを定期的に評価する「自己点検・評価」を行っており、本協会が掲げる目的の中の「自主的努力」の部分がそれにあたります。今後も大学が行う「自己点検・評価」がより充実するよう、大学の支援を継続していきたいと思います。
 本協会は、以前から大学はいかにあるべきかという議論を活発に展開してきました。これまで話してきたように、本協会は設立時から大学のあり方を考えてきた団体なので、これからもこうした取組を基盤に据えて、協会の諸事業を展開していくべきと考えます。評価機関であるという意識も大切ですが、評価機関である前に、大学とは何かを深く考える機関であることを忘れずに、日々の業務に取り組んでいきたいと思っています。

 いかがでしたでしょうか。大学基準協会の原点に触れることで、その存在意義を少しでもご理解いただけたら幸いです。

次回は「(2)大学基準協会の現在」として、評価活動をご紹介します。

局長お写真①_修正

(大学基準協会 事務局長 工藤 潤)

インタビューを終えて

 入局してから早1年、担当業務に少しずつ慣れてきて、本協会の事業内容についてもだいぶわかってきたつもりでしたが、今回のインタビューを通して、設立に関わった方々の「大学を良くしたい」という想いが現在も受け継がれているからこそ、今日まで大学基準協会が続いているのだ、という学びがあり、自身もその想いを大切に日々の業務に打ち込みたいと思いました。
 普段は、なかなか大学基準協会の設立の経緯について直接お伝えする機会がないので、多くの方に、この記事を読んでいただけたら嬉しいです。
 今後は客観的な視点を意識して、「社会の方々がどんな情報を知りたいか」「注目されているトピックは何か」といったところに注目して、面白いと感じてもらえる情報発信ができるよう努めてまいります!
 次回は、「(2)大学基準協会の現在」として、大学評価についてインタビューを行います。お楽しみに!

「(2)大学基準協会の現在」はこちら▼