変わる!つながる!高校教育・大学教育・大学入試~高大接続改革の取組み~|3分で知る!大学の今 #6
高大接続改革~「確かな学力」を身に付けるために~
今から10年前の2014年、これからの時代を生きる若者が豊かで幸せな人生を歩めるよう、文部科学省の中央教育審議会*では、高校教育、大学教育、そしてそれらをつなぐ大学入試の改革を進める必要性を「答申」で示しました**。この答申は「高大接続改革答申」と呼ばれていますが、ここに、「確かな学力」を身に付けるための教育を小学校から大学まで一貫して行うよう、方策が示されています。
*中央教育審議会:文部科学省に設置された日本の教育について話し合う審議会で、ここで出された答申に沿って、教育改革が行われます。
**「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について(答申)(中教審第177号)」(平成26年12月22日)
「確かな学力」とは、以下の3つの力を指し、これを「学力の三要素」としています。
文部科学省は、「高大接続改革答申」が出されて以降、これらの「学力の三要素」をより一層伸ばしていくために、高校や大学での教育と、それらを接続する大学入学者選抜と合わせて、一体的に改革する取組みを進めてきました。これが、「高大接続改革」です。
高大接続改革のポイント
高大接続改革答申」が出されてからこの10年間で、高校教育・大学教育・大学入試は、大きく変わりました。それぞれ、どのように変わったのでしょうか?
① 高等学校教育改革
高等学校では、「学力の三要素」が確実に身に付くよう、科目の構成の見直しや、学習・指導方法の改善、教員の資質能力を向上させる取り組み等が進められてきました。特筆すべき点は、学習指導要領***の改訂(2022年度施行)で総合的な学習の時間に代わって「総合的な探究の時間」が必修となったことです。この授業は、探究的な見方・考え方を働かせ、横断的・総合的な学習を行うことを通して、課題を解決し、自己の生き方を考えていくための資質・能力を育成することを目標にしています。「アクティブ・ラーニング」の手法を用いて生徒が主体的に学べる工夫や、科目を横断的に学べるように教科の垣根を越えて教員が連携した授業を行う学校も出てきました。しかし、具体的な学習内容は各高校の判断にゆだねられているため、限られた時間でどのような探究の学習ができるのか、テーマや課題の設定方法、地域・企業・大学等との協力方法等も含め、試行錯誤を重ねている高校も多いようです。
***学習指導要領:文部科学省が定めている初等教育・中等教育の教育課程の基準。
② 大学教育改革
大学教育では、まず2017年度に「三つのポリシー」の公表が義務化され、これに基づく大学教育の質的転換や、認証評価制度の改善など、大学教育の根本的な改革が行われました。そして、高等学校までに培った「学力の三要素」の更なる伸長を目指して改革が進められています。例えば、授業では教員が知識を伝達するやり方から、高校教育と同様に「アクティブ・ラーニング」の手法を採り入れ、「何を学ぶ」から「どのように学ぶ」へと変化しています。また、学科を超えて学ぶ機会を設けるなど、主体的な学びが実践されるよう取り組んでいます。
③ 大学入試改革
2021年、大学入試は大きな転換期を迎え、「学力の三要素」を多面的・総合的に評価する方策に変わりました。現況の入試は、大きく分けて「一般選抜」「学校推薦型選抜」(「推薦入試」から変更)「総合型選抜」(「AO入試」から変更)の三つの方式があります。このうち「総合型選抜」は志願者の能力・意欲・適正等を書類審査や面接等を組み合わせて評価し、大学教育を受けるために必要な能力を小論文やプレゼン等で総合的に評価する入試です。また、この年、「大学入試センター試験」は「大学入学共通テスト」に変わり、思考力や判断力が問われる問題が多くなりました。
実は改革の鍵を握っているのは大学入試です。大学入試の内容を変えることで、高校での教育も変わっていくからです。
まとめにかえて
高等学校は「中等教育」、大学は「高等教育」。校種の違いもあって、隔たりを感じることもありましたが、高大接続改革で、高校と大学の垣根が低くなりました。大学の教員が高校で授業を行う「出前授業」等、高校と大学の連携も深まってきています。
小学校から大学までの一連の教育が、「学力の三要素」の育成を通じ、これからを生きる若者の夢を育て、実りある豊かな人生につながることを期待しています。
総務部総務企画課 蔦美和子、串田藍子、井上陽子