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大学基準協会と私 #2|木村彰方(東京医科歯科大学 名誉教授)

 「大学基準協会と私」は、大学基準協会の活動に関わる方に、これまでの本協会での仕事を振り返りながら、本協会の活動の意義や本協会に期待することなどを語っていただく連載企画です。
 今回は、大学評価委員会の委員長である東京医科歯科大学名誉教授 木村彰方先生にご寄稿いただきました。

 私が大学基準協会の大学評価委員会委員に就任したのは2009 年4月でした。本務校(東京医科歯科大学)にて2008年4 月から評価担当副学長に就任していましたので、そのことからの大学推薦を受けての大学基準協会での選任であったことと思います。

 私は、九州大学医学部を卒業後に内科医として勤務した後に、大学院から基礎医学(人類遺伝学)の道に入り、九州大学生体防御医学研究所の助手・助教授を経て東京医科歯科大学難治疾患研究所教授となり、種々の難治疾患を対象として、その病因や病態形成に寄与する遺伝要因の研究を行って来ました。
 つまり、高等教育の専門家でもなく、評価の経験もありませんでしたが、2004 年度からの国立大学法人化に備えて、2001 年度から国立大学法人評価の試行が行われた際に、私の所属する研究所が「研究」に関する試行評価の対象となり、当時の所長から対応を依頼されたことが、私が評価に関わることになった端緒です。

 そこで、評価を受ける側として、研究所の目的、研究領域の特色、組織・分野構成の特徴、顕著な業績や社会貢献等について、事務方の協力を得て、2002 年度いっぱいをかけて調査を行った結果を自己点検・評価報告書に取りまとめ、大学評価・学位授与機構(現在の(独)大学改革支援・学位授与機構)による試行評価を受けた次第です。その過程で、評価基準の明示、水準の考え方、報告書の作成手順、意見申し立て等の評価システムを学びました。
 また、2005 年度からは、評価担当学長特別補佐として、学内の教員業績評価システムの構築に携わりましたので、いわば学内データを取りまとめて基準・水準を作成し、それに基づいて評価する立場にありました。

 そのような背景のもとに大学基準協会による大学評価に携わることになりましたが、初めてでありながら、大学評価分科会の主査として北里大学の評価にあたることになりました。2009年度は大学基準協会による認証評価の第1サイクルの年でしたので、受審校のすべてのキャンパスを訪問する実地調査がありました。具体的には、本部や医療系学部、理学部がある相模原キャンパス、北里研究所や薬学部がある白金キャンパス、獣医学部がある十和田キャンパス、当時水産学部があった三陸キャンパスに、それぞれの学部評価を担当する先生方と、当時大学評価委員会の幹事をされていた先生、大学基準協会職員の方と共に伺い、施設見学や教職員との面談に臨みました。
 また、十和田キャンパスには工藤局長が同行されましたが、どのキャンパスに伺っても、感銘を受ける取組みが多々ありましたし、遠方への実地調査では前日入りして委員の先生方や大学基準協会の職員の皆様と過ごしますので、夜の懇親会を含めて、多くの貴重な情報をいただくことが出来ました。これらの経験は本務校での職務に活かせる私自身の意識改革ともなりました。

 その後は、2010 年度札幌医科大学、2011 年度九州保健福祉大学、2012 年度慶應義塾大学、2013 年度愛知医科大学、2014 年度金沢医科大学と主に医療系大学の主査を務めました。2015 年度からの3年間は大学評価委員会の副委員長となり、改善報告書評価分科会の主査を務め、2018 年度から現在まで委員長を務めていますが、データに基づく評価調整に心掛けています。

 これとは別に、基準委員会にも参画しており、2011 年6月から1期2年。2015 年6月から4期8年(うち2017 年6月からの3期は副委員長)を務めましたが、ここでは専門職大学院認証評価基準及び分野別評価基準や第3サイクルおよび第4サイクルの大学基準作りに携わりました。また、基準委員会と大学評価委員会の仲介的役割として設置されていた大学評価企画立案委員会の委員も2015 年度から2期4年務めました。

 加えて、2017 年度からの1期2年は、海外大学との共同認証プロジェクト(iJAS)を見据えて、基準委員会の下に設置された相互認証WG の主査となり、台湾評鑑協会(TWAEA)との協働で共同認証評価基準の作成に携わりました。さらに、その発展形として新たに設置された共同認証評価委員会では、2018 年6月から現在まで委員を務めており、その一環として2018 年12 月~ 2019 年5月には試行評価分科会メンバーとしてTWAEA からの委員とともに国際教養大学の試行認証評価にあたりました。

 本稿をまとめるにあたってこれまでの大学基準協会での委員歴を調べてみますと、15 年間に渡って種々の委員会に関与させていただいたことが分かります。とりわけ認証評価では、評価する側と評価される側が常に双方向の働きかけを行うことで、高等教育機関である大学の個性をさらに高めるための改善に資することが出来ると常々考えていますが、それが大学基準協会から学んだ、評価に関する私の考え方の基盤となりました。

 昨今は評価疲れとの言葉も聞かれますが、大学基準協会の機関別認証評価においても基礎要件確認シートを利用するなどして、評価に携わる方々の作業を軽減化しています。それに加えて、ある時期が来た際に改まってデータを取り揃えるのではなく、大学に散在するデータを統合し、常にアップデートしつつ、それらを分析して学内に情報提供するInstitute Research の仕組みを持つことで、点検・評価報告書等の作成にかかる時間とコストを軽減できると考えています。Peer Review であることの特徴を活かして、多様な大学のあり方を踏まえた、画一的でない細やかな評価によって、個々の大学の個性が伸びることを支援する立場の大学基準協会には、今後ともよりよい評価のあり方を目指すことを期待します。

木村 彰方 大学評価委員会委員長/東京医科歯科大学名誉教授