2021年度の大学評価について ―評価結果の分析(ダイジェスト版)―
申請大学の状況
2021年度の申請大学について、国立・公立・私立の合計49大学から申請があり、そのうち私立大学からの申請が93.9%を占めています。
また、今年度は、2~4学部を持つ大学からの申請が最も多く、収容定員から見ると、1,001人から3,000人以下の大学が28.6%を占めており、昨年度に引き続き、小~中規模の大学からの申請が多かったといえます。
評価結果については、すべての大学に対して大学基準への「適合」又は「不適合」の判定※がなされますが、2021年度は、申請した49大学すべてが「適合」となりました。
※「適合」「不適合」の判定など、評価結果の構成については「#1 大学評価結果から、大学の状況を読み取ろう」にてご紹介しています。
※評価結果検索ページはこちら
評価結果の提言に関する分析
評価結果において付される提言は、「長所」「改善課題」及び「是正勧告」の3種類があります。それぞれの提言の定義は下表のとおりです。
「長所」について
2021年度の大学評価において、「長所」が付されたのは、基準9「社会連携・社会貢献」が最も多い40件、次いで基準7「学生支援」が31件、基準4「教育課程・学習成果」が18件となっています。
また、基準3「教育研究組織」、基準5「学生の受け入れ」、基準6「教員・教員組織」では、長所が昨年度より増加しており、それぞれ2件から10件、1件から4件、2件から12件の増加幅となっています。
「改善課題」について
「改善課題」が付されたのは、基準4「教育課程・学習成果」が59件と最も多く、次いで基準5「学生の受け入れ」が44件、基準2「内部質保証」が23件でした。これらの基準では、2019年度、2020年度から引き続き、「改善課題」が多く付されています。
基準4「教育課程・学習成果」の「改善課題」では、学習成果の把握・評価が不十分な学部・研究科に対する指摘が20件となり、昨年度に引き続き最多でした。
なお、上表における「基礎要件に関する提言」とは、法令要件やその他の基礎的な要件等を満たしていない場合に付される提言のことです。
「是正勧告」について
「是正勧告」が付されたのは、基準5「学生の受け入れ」が14件と最も多く、次いで基準4「教育課程・学習成果」が13件、基準2「内部質保証」が7件、そのほか基準10(1)「大学運営」及び(2)「財務」がそれぞれ3件となっています。2020年度と比較すると、基準2「内部質保証」の是正勧告は増加しています。
また、基準4「教育課程・学習成果」の「是正勧告」は昨年度に比べ減少しているものの、13件すべてが「基礎要件に関する提言」となっています。
「内部質保証」と「学習成果」に関する分析
※「内部質保証」という概念については「特集:大学基準協会とは(2)」の「本協会の評価の特徴」をご覧ください。
「内部質保証」について
大学基準協会の評価において重要視される「内部質保証」は、本協会が定める大学基準において、体制の整備や、内部質保証に関わる組織の権限・役割分担の明確化、内部質保証推進組織による教学マネジメント等を行うことにより、大学自身が教育研究等の質を自ら保証することが求められています。
これを踏まえ、評価結果の基準2「内部質保証」において、「長所」が付されたのは1大学(2.0%)、いずれの提言も付されなかったのは21大学(42.9%)であるのに対し、「改善課題」が付されたのは20大学(40.8%)、「是正勧告」が付されたのは7大学(14.3%)と全体の約55.1%の大学で問題を指摘されています。
2020年度は、「改善課題」又は「是正勧告」が付された大学が全体の約53.8%あったことに鑑みると、内部質保証推進組織を中心とした内部質保証システムの整備は昨年度とほぼ変わらないことが読み取れます。
また、今年度の内部質保証に関する評価においては、特に内部質保証の有効性に課題が見られた大学が18大学(36.7%)と多くなっています。これらについては、各学部・研究科の改善活動に対する内部質保証推進組織のマネジメント、または各学部・研究科の自己点検・評価結果を踏まえた改善支援に課題があるということを指摘しています。
「学習成果」について
内部質保証のために学生の必要不可欠な学習成果の把握・評価については、学位授与方針に示した知識、技能、態度等の学習成果を学生が卒業・修了時に修得したかどうかを把握・評価すること、そして、そのために学習成果を測定する方法や指標を開発して適用することを求めています。
これを踏まえ、評価結果の基準4「教育課程・学習成果」において、学習成果に関する「長所」が付されたのは3大学(6.1%)、いずれの提言も付されなかったのは22大学(44.9%)、「改善課題」が付されたのは24大学(49.0%)でした。
2020年度に引き続き、「是正勧告」が付された大学はありませんでしたが、前々年度は66.7%、前年度は51.3%の大学で「改善課題」を付されていたことに鑑みると、学位授与方針に示した学習成果の把握・評価への理解が進み、把握するための取り組みに着手している大学が、徐々に増えていることがわかります。
また、学習成果に関する「長所」については、測定指標やデータの蓄積・分析方法において独自の工夫が見受けられました。
おわりに
2021年度の評価では、昨年度に引き続き「内部質保証」について課題が見られる大学が一定数ありましたが、学生の学習成果の把握・評価では、「改善課題」が付される大学が減りつつあり、改善のために取り組んでいる大学が増えていることが窺えました。
また、「教育研究組織」や「学生の受け入れ」、「教員・教員組織」において「長所」が付される大学が例年よりも多く見られ、大学の教育研究活動の改善・向上が益々期待されます。
本記事でご紹介しきれていない情報もまだまだ沢山ありますので、過年度の評価結果の分析を含め、もっと詳しく知りたい方は、下記のページの「評価結果の分析」をぜひご覧ください。