大学による「就職支援」ビフォー・アフター|3分で知る!大学の今 #5
「就職課」が「キャリアセンター」に変わったのはなぜ?
大学院に進学する人などを除いて、多くの大学生は在学中に就職活動を行い、卒業後に社会に羽ばたいていきます。その際、学内で学生の進路選択や就職活動に関してさまざまな支援をしてくれるところが「キャリアセンター」です。1990年代ごろまで、就職を支援してくれるところは「就職課」などと呼ばれていましたが、現在では「キャリアセンター」「キャリア支援課」など、「キャリア」を冠しているところが多いようです。いつ、どういった目的で変わったのでしょうか?
立命館大学のHPには、下記のように掲載されています。
いわゆる「出口指導」=就職のあっせんではなく、大学卒業後も何十年と続く学生の生涯を意識した支援へと変わったわけですが、こうした動きは他大学にも広がっていきました。
背景には、1990年代初め、バブルが崩壊し、大卒者の就職は「氷河期」と言われるほどまでに厳しくなったことが挙げられます。このような社会の変化を受けて、2000年前後より、大学では就職支援の充実が求められるようになり、就職支援のあり方も変わってきました。
「キャリア教育」は大学の義務
現在、学生のキャリア支援を行うのは、「キャリアセンター」だけではありません。2011年4月に改正・施行された大学設置基準に、以下の条項が追加されました。
*厚生補導:学生の人間形成を図るために行われる正課外の諸活動における様々な指導,援助等であり,具体的には,課外教育活動,奨学援護,保健指導,職業指導等を含む。
つまり、「学生が卒業後に自立して生きていくために必要な能力を、教育課程と厚生補導を通じて培うことができるよう、部署同士が連携し、体制を整えること」が大学に求められました。この設置基準の改正によって、キャリア教育が必須となり、各大学では単位を授与する「正課科目」として「キャリア科目」を開講するようになった訳です。
「キャリア教育」とは、文部科学省「キャリア教育の推進に関する総合的調査研究協力者会議報告書」(2004年1月)において「児童生徒一人一人のキャリア発達を支援し,それぞれにふさわしいキャリアを形成していくために必要な意欲・態度や能力を育てる教育」と定義されていますが、「キャリア教育」という言葉が公の文書に初めて登場したのが1999年、以下の答申の中です。
学生の就職が厳しくなる中、キャリア支援の充実と合わせて、学生の職業観を育てるキャリア教育も同時期に進んでいったのです。
また、最近よく使われる「キャリア」という言葉ですが、文部科学省のHPに、その語源や意味について述べた資料がありました。
イマドキの学生は、キャリア教育・キャリア支援を受けつつ、「いかに働くか」「いかに生きるか」を4年間の学修、課外活動、就活などを通して模索します。自らの適性を見極め、長いスパンで今後のキャリアをデザインするのです。
むすびにかえて
就職支援からキャリア支援へ、そしてキャリア教育の義務化という流れの中で、各大学では工夫を凝らしたさまざまな取組みが行われてきています。
最近では、キャリア教育やキャリア支援の一環として「インターンシップ」(職業体験)を取り入れている大学が多くなりました。インターンシップは、学生にとって社会に踏み出す契機となり、職業観の醸成を促すなど、アルバイトとは違った経験となります。次回の「大学の特長、ココにあり!」では、大東文化大学における大学主導のインターンシップについての記事を掲載します。どうぞご期待ください。
総務部総務企画課 蔦美和子 串田藍子 井上陽子
参考文献:
・児美川 孝一郎「大学におけるキャリア教育を俯瞰する —比較の観点から
—」一般社団法人 日本私立大学連盟『大学時報』2023年5月号 第5号
通巻410号、2023年。
・永作稔・三保紀裕(編)『大学におけるキャリア教育とは何か』ナカニシ
ヤ出版、2019年。