『未来人材と高等教育』【ブックレビュー#32】
初めまして。今年度8月より総務企画課に採用となりました玉水と申します。何卒よろしくお願い申し上げます。
さて、私が今回ご紹介させていただくのは、こちらの本です。
【はじめに】
今回のブックレビューを執筆するにあたり、どのような本がよいか本協会の書庫で探していたところ、こちらの本のタイトルに興味を惹かれました。
なぜ惹かれたのかと言いますと、本協会広報誌『じゅあ』第71号(本年10月刊行)において、生成AIをテーマにした座談会の記事を掲載したこともあり、生成AI等のテクノロジーを活用した今後の高等教育を考えていく上で非常にリンクする部分があるのではないかと思ったからです。
座談会では、大学関係者からの「生成AI等は受け入れざるを得ず、教育もそれに合わせて変わっていかなければならない」ことや「AI が人智を超えるようになる時代を見据えて、学生たちに何を伝えるか」といった意見が印象的であり、こうしたことへのヒントを期待して本書を手に取りました。
なお、広報誌『じゅあ』は本協会ホームページからダウンロードできるほか、この座談会記事はnoteでも公開しておりますので、ご興味のある方はぜひご一読ください。
【本書の概要】
本書は、経済産業省の「未来人材ビジョン」(2022年5月)を踏まえつつ、社会が急速に変化していく中で求められる人材像と、そうした人材を輩出するための教育について
山本 康正 氏(京都大学経営管理大学院客員教授)
田久保 喜彦 氏(グロービス経営大学院経営研究科長・教授)
柳川 範之 氏(東京大学大学院経済学研究科教授/経済産業省「未来人材会議」座長)
の3名にインタビューを行い、それぞれの立場から「求められる未来人材」及び「今後の教育の方向性」が語られています。
【課題解決型教育の重要性】
私がこの本を読んで感じたことは
という内容があり、これらを受けて、
知識集約型の教育から、自ら課題を設定し、解決に向けて自ら学ぶ教育へ移行していく必要があること
AI等のテクノロジーの活用方法、環境問題、国際的な政治情勢の不安定化など、答えのない課題に向けてどのように考えていくかということ
他者とのディスカッションなどを通して知見を広めることで自分の考えを深化させ、考える力を養っていく必要があるということ
の3つが重要な点であると思いました。
私がこの本を選んだ時には、生成AI等の最新のテクノロジーを活用していく人材を「未来人材」と捉え、ITリテラシー等を踏まえながらその活用方法について議論する内容であると想像していました。しかし、3名の方へのインタビューでは、それぞれ視点は異なるものの、最新技術を活用できる知識・スキルの修得の前提として、「自ら課題を設定し、解決に向けて自ら学ぶ」という課題解決型教育の重要性が語られていました。
【自身の実体験を元に考えて】
私は現在、広報担当としてホームページや公式SNSのアクセス解析を担当していますが、出てきた数字と自分の考えを照らし合わせたときに「果たしてこの分析で本当に合っているのか」と不安になることがあります。恐らくこの不安の正体は「どういうホームページにしたいのか」という目標が明確ではないため、出てきた数字を見たときに目標に対して「何をすればよいのか」という課題にうまく結びつけられていないことに起因しているのだと思います。
これは恐らくAIやデータサイエンスの活用といったテクニカルな技術を身に着ければ解決する問題ではなく、自分の中で目標を確立できてこそ初めて、そういった技術的なツールを活用して課題を抽出し、解決に導いていけるのだと思いました。
【終わりに】
私自身、ChatGPT等の生成AIの出現により、仕事の仕方が大きく変わると言われている中で「少しでも早くその使い方を身につけなければ」と思っていました。しかし、繰り返しになりますが、大事なことは「ツールの使い方」を覚えることではなく「目標に向かっていく中で課題は何か。課題を抽出及び解決する中で使えるものは何か」という思考の結果として、生成AI等のツールを活用していくことなのです。
本書では、AIやデータサイエンスを扱える人材の必要性や重要性も述べられていましたが、3名の方へのインタビューがそうであったように、「未来人材」のための高等教育では何より課題解決型教育が重要になるということであり、これは私が本書を通して感じたことに通じる部分があったのではないかと思います。
拙い文章で読みづらい部分もあったと思いますが、最後までお読みいただきありがとうございました。