大学の特長、ココにあり!#1    日本女子大学における「社会で自立した女性」を目指す教育 前編
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大学の特長、ココにあり!#1    日本女子大学における「社会で自立した女性」を目指す教育 前編

 本協会の大学及び短期大学等の評価は、大学・短期大学の教職員、その他高等教育関係者の方々によって行われています。
このコーナーでは、そうした評価の結果において、大学関係者が認めた優れた教育活動等について、評価結果の内容をさらに深掘りして、皆様にご紹介していきます。
 今回は、女子高等教育機関として先駆的な取組みが見られる日本女子大学へ取材させていただきました。

取材にあたって

 日本女子大学では、創立者成瀬仁蔵の男女平等の想いが表れている「女子を先ず人として、第二に婦人として、第三に国民として、教育する」という建学の精神に基づいた教育活動が行われています。2019年度「大学評価」結果で長所として取りあげた「教養特別講義」及び「リカレント教育課程」はその精神を具現化した取組みといえます。
 今回は、この2つの取組みについてお伺いしながら、日本女子大学における「社会で自立した女性」を目指す教育について考えてみたいと思います。

今回取材する取組みについて

教養特別講義
 大学で学ぶ意義の理解と自己形成を促し、女性として社会を生きる力を涵養するために、「教養特別講義1」「教養特別講義2」を必修科目として設置しており、これらの科目を順次的に開講している。具体的には、1年次には大学の理念・目的等を学んだのち、宿泊を伴う学外でのセミナーを通じて人間関係を形成するとともに自己を見つめ直し、2・3年次には、学内外からの講師を招いて「女性のこころとからだ」「女性と職業」「女性と世界」等のテーマで、講演者とディスカッションすることで広い視野と教養の育成を図っており、学生が女性として現代を生きるための将来像を自主的に考える力を養うことにつながっていることは、評価できる。
リカレント教育課程
 大学の特性を生かし、女性の再就職支援プログラムとして「リカレント教育課程」を設け、「生涯学習センター」が中心となって、社会のニーズ等を踏まえた改善を図りつつ、長きにわたりこれを運営している。2016(平成28)年には講師、連携企業、受講生及び修了生等の関係者からの意見をもとにカリキュラムを改定したほか、就業経験に合わせた受講者のクラス分け、オンデマンドコンテンツの導入による受講環境の整備、キャリアカウンセリング等を実施し受講者層の変化やそのニーズに合わせて、プログラムの改善に取り組んできた。その成果として、受講希望者が増加するとともに、就職を希望する受講者の就職率が高い割合を維持していることから、女性の高等教育機関としての社会的役割を果たすものとして、評価できる。

上記いずれも2019年度「日本女子大学に対する大学評価(認証評価)結果」の長所より抜粋


お話しいただく方
日本女子大学 理学部 数物科学科
小川 賀代 教授

日本女子大学の沿革

――貴学はどのような経緯で設立されたのでしょうか?
小川教授(以下、「小川」):本学は1901年4月に開学しまして、今年で創立120周年を迎えます。2015年のNHK連続テレビ小説『あさが来た』でも描かれていたように、本学は、創立者となる成瀬仁蔵が、女性にも高等教育が必要不可欠であるという強い想いで著書の『女子教育』を持って全国を奔走し、大隈重信、広岡浅子、そして渋沢栄一らの多くの政治家や実業家の協力を得て開校しました。開校当時の日本は、女子が尋常小学校に通うことがようやく一般的になってきた時代です。また、欧米でも、男女の不平等がまだ当たり前といったような時代でした。こうした時代背景の中で、男女平等を基本にした人間教育を第一に置き、先入観や古いしきたりにとらわれず、幅広い視野と知識、そして社会性を併せ持つ女性の育成を目指したことは、その当時としては大変画期的だったと思います。

 建学の精神である「女子をまず人として、第二に婦人として、第三に国民として教育する」という成瀬の言葉がありますが、ここには本学の教育に対する強い理念が表れています。この精神をもって設立され、その後、時代、時代で様々な問題がありましたが、どのような課題にも対処できる高い能力と、その能力をあらゆる場面で生かせる応用力、表現力、そして多様な価値観に対応できるフレキシブルな感性を育成することを本学の使命として教育活動を続けてきました。

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(百二十年館)

――創立当初から男女平等を基本とした人間教育に取り組んでこられたのですね。現在、貴学が考える理想の女性像とはどのようなものでしょうか?
小川:様々な困難にも自立的に立ち向かっていける、しなやかさと強さを併せ持つ女性こそが本学の育てたい学生像になっています。

学びの特色1「教養特別講義」

「教養特別講義」の開講経緯

――特色の一つである「教養特別講義」について、どのような経緯で開講されたのでしょうか?
小川:本学が開学したときに創立者の成瀬は、教育の中心に人格教育があると考えていました。そうした考えから、成瀬は学生に対し本学の教育方針を明らかにして、校風を樹立していくことを目的とした「実践倫理」という授業を開設しました。「教養特別講義」はこの「実践倫理」がベースとなっています。内容は、思想、哲学、宗教、教育、科学、芸術、社会問題など多岐にわたり、成瀬が逝去した後も、当時の学長がそれぞれの持ち味を活かしつつ、時代の変化に対応しながら授業内容を展開してきました。
 戦後になってからは、第6代学長の上代タノがこの「実践倫理」に加え、学外からも講師を迎えて話を聞く「木曜講座」というものを立ち上げます。そして、第7代学長の有賀喜左衛門が「教養特別講義」を設置し、これが「実践倫理」に代わるものとなりました。

 「教養特別講義1」では、本学の歴史や建学の精神を学び、1年次全員で軽井沢の三泉寮へ行って1泊2日のセミナーを実施してきました。また、「教養特別講義2」では、学生たちの「この人の話を聞いてみたい」「この先輩の話を聞いてみたい」といった意見を基に、本学にゆかりのある方々をお招きして講演いただくという方法で講義を展開してきました。
 そして、今年度、本学が創立120周年を迎え、「教養特別講義1、2」については発展的改革を行い、2021年度からは「教養特別講義」及び「JWU(Japan Women’s University)キャリア科目」「JWU社会連携科目」という科目で新しいスタートを切っているところです。

授業内容

――今年度から科目編成を変更したということですが、授業内容はどのように変わったのでしょうか?
小川:現代の様々な社会問題や環境問題、価値観の多様化に対応したカリキュラム構成とし、座学で学んだことを行動に移すなど、より発展的な内容となっています。まず、新たな「教養特別講義」は、もともとの「教養特別講義1」を踏襲しています。その内容にプラスして、学生が講師を推薦する「教養特別講義2」の形式を新しいカリキュラムの中にも取り入れています。
 次に、「JWUキャリア科目・JWU社会連携科目」ですが、これらのベースは、昨年度まで行っていました「教養特別講義2」と「キャリア形成科目」となります。社会で活躍できる女性を育成するということを踏まえ、本学としては、座学で学んだことを行動に移すということを重要視しています。そのため、2021年度からは、社会連携、ボランティア等の基礎的知識を学び、その後に、ボランティアやインターンシップ、自治体や企業とのプロジェクトベースの実践授業を行うことで、座学で学んだ知識を実際に行動に移し、さらに学んでいく、実際にチャレンジしてみる、ということをスタートさせています。

――講演者の選定に関して学生の意見を取り入れているということでしたが、実際に学生はどのように関与しているのでしょうか?
小川:まず、在学生の中から各学科1名ずつ教養特別講義学生委員を選出してもらっています。そこで委員となった学生たちには、同級生からの意見等を踏まえながら、講演候補者の選定を行ってもらっています。実際の講演者への連絡は、教員が担当していますが、講演時の司会は学生が行うなど、運営には学生たちも積極的に関与しています。

――授業に関する学生からの反応はいかがでしょうか?
小川:昨年までのことになりますが、例えば「教養特別講義1」で自分の大学の歴史や軽井沢セミナーを通して学んだことについて、学生からは、

「大学の設立の経緯を知ることで本学の歴史の深さや重み、設立に携わった方々の並々ならぬ思いを知ることができ、本学の学生であることを誇りに思えた」
「先人たちの目標に向かって取り組んだ姿勢に感化されて、真摯に自分の大学生活も取り組んでいきたい」
「高校までは比較的座学の授業が多かったが、セミナー等を通すことによって、能動的な取組みをしていこうと思うきっかけになった」
「意志を持って自発的に学ぶことの大切さが分かった」

という感想をもらっています。初年次教育として、大学生として学んでほしい姿勢をしっかり習得できているように感じています。

 そして、2年次、3年次が中心となる「教養特別講義2」では、

「選択肢を広げるきっかけとなった」
「人生のロールモデルが見つかった」
「社会を生きる上での教養が学べた」
「生き方のヒントがあり、視野が広がった」

という感想をもらっています。

今後の展望


――今年度から授業内容が新しくなりましたが、今後の展望についてはいかがでしょうか?
小川:今年は「教養特別講義」が新しくなったということで、新しい冊子『教養特別講義 ―本学の建学の精神と教育理念を学ぶ―』も作成しました。本学での学びがどのように変化しているのか、本学の同窓会のできた経緯、キャンパスにある古い建物等の歴史などを掲載しています。また、卒業生の活躍についてもまとめまして、入学時に新入生へ配布しています。

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(テキスト『教養特別講義 ―本学の建学の精神と教育理念を学ぶ―』) 

 それに加えて、昨年度の「教養特別講義1」では、学生から「本学の歴史の深さを知った」という声をもらったことがあり、紙のテキストとともに『創立者成瀬仁蔵の生涯』というビデオを作成し、こちらを授業の中で活用していく準備を整えました。

成瀬仁蔵

(ビデオ教材『創立者成瀬仁蔵の生涯』)

 また、「成瀬検定」といって、本学の歴史を知るきっかけになるような取組みに関する簡単な問題から、グループゼミでディスカッションできるような問題までを取りそろえた冊子を作成しまして、今年度から活用を始めています。

――講義の中で「女子大学ならでは」ということを意識されているところはありますか?
小川:男女共同参画が進んできているとはいえ、OECDの女性の活躍の指標にしても、世界的に見たら日本の女性の活躍はまだまだ低い状態であるというのが現実だと思います。こうした状況下でも様々な分野で活躍している本学の卒業生の方々に、後輩に向けてエールを送るという意味も込めて「教養特別講義」での講演をお願いしています。
 こうした「教養特別講義」を通して、学生自身が社会で活躍するときの心構えやそのための素地を培うことができているのではないかと思っています。

後編はこちら


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