大学基準にみる大学と社会
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大学基準にみる大学と社会

 このコーナーでは、70年以上にわたる大学基準協会の歴史が詰まったアーカイブズ資料の一部を紹介しながら、本協会の職員がこれまでの活動やその裏にある想い等を考察し、みなさんにお伝えしていきます。
 なお、本記事は、広報誌『じゅあ JUAA』(第63号/2019年10月)に掲載した「基準協会コラム」の内容を一部修正し、再掲したものです。

 昨今、大学が社会の変化や社会の要請に目を向けることが重要とされており、これは中央教育審議会がとりまとめた『2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)』においても読み取れます。それでは、こうしたことは、大学基準協会(以下、「本協会」といいます。)が設定する大学基準の中ではどのように位置づけられてきたのでしょうか。

 大学基準は、1947(昭和22)年に設定され、改定を繰り返してきましたが、上記のような社会の変化や社会の要請に大学がどう対応すべきかということについて、大学基準に直接的に言葉として示されたのは、1994(平成6)年の改定においてでした。この改定基準では「大学は高度の教育機関として、また学術研究の中心機関として、不断にその活動全般を検証し、大学としてふさわしい教育水準を含む大学全体の充実向上に努める内在的責務を負っている。一方、今日における学術研究の発展と高度化、社会経済構造・産業構造の変動、国際化の進展といった諸要因は、大学の多様化・高度化・個性化の促進を不可欠的なものとして要請するとともに、こうした社会的要請に大学がどう対応しているか、常に自らに問い続けなければならない。」また、「学術研究、文化の進捗や社会的要請の変化などを視野に入れながら、理念・目的の適切性、妥当性について定期的に検討することも大切である。」とされています。

 それまでは、「大学は、最高の教育機関として、また学術文化の研究機関として、重要な使命を持っている。そのため、大学は、その諸組織施設の機能が十分に発揮されるよう、この大学基準に基づいて、絶えず充実向上に努めることが大切である。」(1979(昭和54)年改定の大学基準)というように、上述の、いわば「内在的責務」に重点を置いて大学の責務が語られてきたように思います。

 それでは、1994(平成6)年の改定に際して上記の言葉が示された背景にはどのようなことがあったのでしょうか。この改定基準に基づき、本協会は1996(平成8)年に、大学の自己点検・評価を基礎とする大学評価を開始しましたが、それに際して刊行した『大学評価マニュアル』(1995(平成7)
年)においては、次のような記述があります。「学術研究の複雑化、高度化が進行する中で、政府や企業の研究機関を含む大学以外の諸機関の活躍する場が急速な広がりを見せつつある。こうした状況は、大学の存在理由と存在価値を改めて大学の内外の人々に問い直させる契機となっている。」また、大学評価の営みは、大学が「自らの存在意義を社会に対して明らかにしていくための最も有効な手段であると考えられる。」と記されています。このように、自己点検・評価とそれに基づく大学評価の導入をきっかけとして、また大学設置基準の大綱化と自己点検・評価の努力義務化という状況を踏まえ、「社会」というものが改めて大学基準の中で強く意識されたのだといえるでしょう。

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(「『大学基準』及びその解説」1947年12月の表紙)

 はじめにも書いたように、今日、ますます大学は「社会」というものを意識し、その変化や要請に応じていかなければならない中にあります。ただし、上記の大学基準や『大学評価マニュアル』には、社会の変化や要請に受動的・他律的ではなく、主体的・自律的に応える大学が描かれていると思います。これは、本協会が一貫して大事にしてきたポイントです。現行の大学基準にも社会の変化や要請への「対応」という言葉がありますが、これは、大学が、自らの存在意義に引き付けて、主体的に判断し、行動するということ、そして本協会の役割は、評価等を手段としてこれを支えていくことであると思います。このことを胸にとめて日々の業務にあたりたいと思います。

(企画・調査研究課 加藤美晴)

 会員大学におかれましては、以下のURLより資料を閲覧していただくことが可能です。


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