大学の特長、ココにあり!#3 龍谷大学における仏教の観点から見たSDGsに関する取組み
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大学の特長、ココにあり!#3 龍谷大学における仏教の観点から見たSDGsに関する取組み

 本協会の大学及び短期大学等の評価は、大学・短期大学の教職員、その他高等教育関係者の方々によって行われています。
 このコーナーでは、そうした評価の結果において、大学関係者が認めた優れた教育活動等について、評価結果の内容をさらに深掘りして、皆様にご紹介していきます。
 3回目となる今回は、2020年度に評価を行った龍谷大学にご協力いただき、仏教の観点から見たSDGs(「仏教SDGs」)に関する取組みについてお話を伺いました。

取材にあたって

 龍谷大学は、浄土真宗の精神を建学の精神とし、2019年の創立380周年にあたり「自省利他」を行動哲学として掲げています。SDGsと仏教を結び付けた「仏教SDGs」という独自のアプローチで「誰一人取り残さない」持続可能な社会に向けた多様な取り組みを推進しています。今回は、この「仏教SDGs」の主要な取組みである「ソーシャル企業認証制度」と「社会起業家育成プログラム」について取材しました。

※SDGsとは、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)の略であり、2015年9月の国連サミットで採択された、2030年までに持続可能でより良い世界を目指す国際目標のこと。

今回取材する取組みについて

仏教の観点から見たSDGsに関する研究及び具現化事業
 
国際的取組みであるSDGsと仏教との共通性から、仏教の観点から見たSDGsに関する研究及び具現化の事業等を運営することを目的として「ユヌスソーシャルビジネスリサーチセンター」を設置したことは、現代の社会的要請や国際的環境への対応として高等教育機関において独自性を有していると認められる。その活動も活発かつ多様であり、「誰一人取り残さない」持続可能な社会に向けて、社会問題を身近なところから考えビジネスの手法での解決を目指す実践的教育プログラムである「社会起業家育成プログラム」を実施するなど、設立目的である「SDGsに関する研究及び具現化の事業」等の達成が期待できることから、評価できる。

2020年度「龍谷大学に対する大学評価(認証評価)結果」の長所より抜粋

お話しいただく方
龍谷大学
入澤 崇 学長
白石 克孝 副学長
田中 雅子 学長室(広報)課長

龍谷大学の建学の精神と「仏教SDGs」について

――まずは、貴学の建学の精神と「仏教SDGs」の関係について教えてください。
入澤学長(以下、「入澤」):龍谷大学の設立は、1639年に西本願寺の境内に設置された僧侶養成機関の学寮が始まりで、現在では、京都市(深草・大宮)と滋賀県大津市(瀬田)の3つのキャンパスで、約2万人の学生が学ぶ総合大学として、本年で創立382年となります。
 本学は、創立380年を迎えた2019年に、自らを省みて他を利するという意味の「自省利他」という行動哲学を発信しました。この「自省利他」は、仏教の基本的な教えであり、建学の精神である浄土真宗の精神にもつながるものですが、本学では、地球規模の社会課題が増加している状況を踏まえ、常に我が身を省みて社会のために尽くす人を育成することを提唱しました。
 また、2015年に国連から発信されたSDGsでは、17の達成目標を掲げ、「誰一人取り残さない」というメッセージが掲げられていました。私は、「誰一人取り残さない」社会を目指すSDGsと、「摂取不捨」(すべての者をおさめとって見捨てない)という仏教の考え方に共通点があると感じました。
 そうした経緯から、仏教とSDGsとを結びつける「仏教SDGs」という本学ならではのアプローチで、多様な取り組みを展開しています。

(キャンパス風景)

――「仏教SDGs」は具体的にどのような取組みを行っているのでしょうか?
入澤:本学では9学部1短期大学部の全ての学部で1年次の必修科目として「仏教の思想」を配置しています。全ての学生が、この授業を受けることで浄土真宗の精神を学ぶ機会を設けています。また、本学の学生たちの特徴として、社会貢献を志す学生が多くいることを実感しています。いくつかの学生グループは、実際に社会問題を解決しようとする活動を始めています。例えば、獣害被害に遭っている地域の方々と協力しながら、これまでは廃棄されてきた動物の命を、ジビエとして提供することで「命を最後まで大切に扱う」活動等です。

 また、障がいのある学生にとっての社会的障壁をともに乗り越えようとする学生も多くいます。例えば、聴覚障がいのある学生の代わりにノートテイクをする学生や、障がいのある学生の就職を一緒に考え、障がいのある学生が社会で活躍できるための起業をする学生もいます。最近では、ボランティア活動として、台風や地震の被害に遭われた地域へ支援活動に行く学生もみられます。

白石副学長(以下、「白石」):今年の4月に「仏教SDGs推進協議会」という「仏教SDGs」の全学的な推進組織を立ち上げました。本学では、「仏教SDGs」が掲げる「誰一人取り残さない」という考えに基づき、困難な状況に直面する学生の現状を把握し、その対応に努めています。
 具体的な支援の1つとしては、コロナ禍で生活が困窮する一人暮らしの学生のために「百縁夕食」という支援を展開しました。この活動は、大学生協の全面協力のもと、一人暮らしの学生に100円で夕食を提供するとともに、コロナ禍で学生同士の交流が制限される中で、新たな交流の場となる「縁」を作るというコンセプトで取り組みました。
 このように、「仏教SDGs」は、「SDGs」と「仏教」と「大学」という3つのキーワードが結びつくことにより、私たちのこれまでの活動に新たな意味付けや革新を与えてくれています。こうしたことを踏まえて、「仏教SDGs推進協議会」でも今まで私たちが取り組んできた課題をより分かりやすく発信できるように活動しているところです。

(キャンパス風景)

「ユヌスソーシャルビジネスリサーチセンター」について

――「仏教SDGs」を推進する拠点として「ユヌスソーシャルビジネスリサーチセンター」がありますが、設立経緯や目的についてお聞かせください。
白石:本センターの名称になっているバングラデシュのムハマド・ユヌス先生は、自身が設立したグラミン銀行でマイクロファイナンス事業を立ち上げるなど、バングラデシュの社会状況を変えていくことをはじめとして、持続可能な社会を見据えたソーシャルビジネスのあり方等を発信している方です。
 そのユヌス先生の志を普及・発信しているセンターが世界各地の大学に設立されています。日本でいくつかの大学に声が掛かる中で本学にも相談があり、ソーシャルビジネスで世界と連携することや、ソーシャルビジネスによって課題を抱えている人々の生活を変えていくという目的に共鳴して、ぜひ本学も一員に加えてもらいたいとユヌス先生に連絡を取りました。そして、2019年に、本学の創立380周年記念事業の一環として、「ユヌスソーシャルビジネスリサーチセンター」の設置が実現しました。

「ソーシャル企業認証制度」(通称:S認証)について

――「ユヌスソーシャルビジネスリサーチセンター」では、具体的にどのような取組みを行っているのでしょうか?
白石:本センターの取組みの1つとして、社会問題の解決に取り組んでいる企業等を社会的企業として認証し、そうした企業を広く周知させていく取組である「ソーシャル企業認証制度」(S認証)を始めました。この制度は、実際にその企業の取組みを可視化し、企業に自らの事業が社会から認められているという確信を持ってもらうことを通して、地域社会における持続可能な成長の実現を目指しています。

 元々、本学の龍谷エクステンションセンター(REC)や研究センターでは、社会連携・社会貢献を目的に掲げて活動しており、これまでも親交のある企業あるいは自治体とともに社会貢献活動を推進してきました。そうした中で、「ユヌスソーシャルビジネスリサーチセンター」を設立後、新しい事業の立ち上げについて、京都信用金庫、京都北都信用金庫、湖東信用金庫からお話があり、この「S認証」が実現しました。先ほどのセンター設立経緯と同様に、本学に社会連携・社会貢献の取組みの伝統があったからこそ、実現できたのではないかと感じています。
 ソーシャルビジネスというと、新しいベンチャー型の企業を想像すると思いますが、必ずしもそうではなくて、以前から社会課題に取り組んでいた企業に加え、社会課題に新たなビジネスアプローチで取り組みたいという大学も、地域社会にESG(「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(ガバナンス)」)の側面等でインパクトをもたらす役割を果たしていきます。「S認証」は、そうした社会貢献に対する意欲のある企業や起業家たちを支援するため、約1年の研究結果に基づいて認証基準を決め、認証方法や役割分担も検討した上で、2021年4月にスタートさせました。

(「S認証」創設時の様子)

――「S認証」には学生も関わっているようですが、どのように参加されているのでしょうか?
白石:学部生2名、大学院生1名に評価員を務めていただいています。
 「S認証」の基準として、環境や社会的な課題などの様々な問題に対してどのような特色ある取組みを行っているかという視点から、具体的な事例と会社としての目標、あるいはとりわけ雇用に対して格段の配慮をしているかどうかといったことをチェックしています。
 評価員の学生は申請企業からの審査報告書をチェックして、採点して、コメントを書くということを専門家と一緒に行っており、専門家の評価者からも、評価に学生の視点が入って良いとのお声をいただいています。
 もっとも、現在の「S認証」は初期のレベルの認証であると考えています。現在はESGの側面等で社会貢献できる事業者であると認識してもらう気付きの段階ですが、今後はより取得の難しい、場合によっては成果が融資にも結びつくようなレベルの認証基準を作るつもりです。

――現在の認証状況や実際に認証された企業からの声についてお聞かせください。
白石:2021年9月段階で334団体を認証していて、今年度で約1,000団体の認証を目標に準備しています。企業の方々の中には、業績等の数字を伴う評価だけではなく、自分たちの活動が社会からどのように評価され、どこに課題があるのかという切り口の評価が浸透していない場合が多く見られます。そのため、自分たちの活動の中に社会問題の解決に貢献している事業があったことに感激される声が出ていました。

「社会起業家育成プログラム」について

――「ユヌスソーシャルビジネスリサーチセンター」では「社会起業家育成プログラム」も展開されているようですが、これはどのような取組みなのでしょうか?
白石:本学では、2001年度から、大学発学生ベンチャーの発掘や育成を目的としたビジネスプランコンテストである「プレゼン龍(ドラゴン)」等、様々な形でベンチャービジネスを育成するための活動を始めています。現在は関西の大学の中でも、ベンチャービジネス、とりわけソーシャルビジネス起業にコミットする大学というイメージが作られ、新聞等のメディアで紹介されるようになりました。
 「仏教SDGs」を打ち出したことを機に、2020年度からはこれまで実施したプログラムを再構築し、社会問題をビジネスという観点から解決することに焦点を当てたプログラムとして「社会起業家育成プログラム」をスタートさせました。

(「社会起業家育成プログラム」の実施風景)

 大学ランキング等の紹介とは違う大学像・人材像を本プログラムではアピールできていると自負しており、このプログラムが本学の看板の正課外教育プログラムとして大きく学生に受け止められていくだろうと確信をもっています。
 昨年は本プログラムを受講した学生が様々なアイデアを出し合うコンテストを実施しました。その中で学長賞を受賞したのが、生理の問題について発表した2名の1年生チームでした。本学には20,000人の学生のうち7,000人を超える女子学生が在籍しています。学生がこれまで表立って提案ができなかった問題について、自分たちが生理の問題で困難を抱えていることを踏まえ、理路整然と提案してくれました。この発表が学長賞を受賞したことが発端となり、2021年度には無償で生理用品を提供する取り組みの実現へとつながりました。

「みんなの仏教SDGsウェブマガジンReTACTION」について

――「仏教SDGs」に関する取組みを伺ってきましたが、そうした取組みはどのように社会に向けて発信しているのでしょうか?
田中:「仏教SDGs」を打ち出したことを機に、2021年6月に仏教SDGsの取り組みを重点的に情報発信するための特設サイト「ReTACTION(リタクション)」を開設しました。この「ReTACTION」という名称については、「ReTA(利他)」と「ACTION(行動)」を合わせ、「自省利他」に基づいて行動するという意味と、「Re(再)」と「TACTION(触覚)」を合わせ、今一度感覚を研ぎ澄まして世界に触れ、持続可能な社会につながるヒントを得るという2つの意味を込めています。
 本サイトではこれまで話題にあがった社会課題の解決に取り組む学生や教員の活動、SDGsの17の目標に寄り添う話題やインタビュー等を掲載しています。
 今後も意識改革と実践的な活動の両輪でSDGsを推進していく本学の情報を社会に向けて発信したいと思っています。

今後の展望について

――「仏教SDGs」に関する今後の展望をお聞かせください。
白石:今後の展望として、1つ目として、我々教職員自身が「仏教SDGs」に対する理解をより深めていき、それを本学の改革の原動力にしていきたいと思っています。
 2つ目として、社会的な課題解決の方法や地域経済の活性化の手法を新しいモデルに作り直し、現代社会に組み込めるような取組みとして発信していきたいと思っています。そして、本学が社会貢献で特色のある大学というイメージで、より一層評価されるように、取組みを新しいステージへと高めていくつもりです。
 最後に、建学の精神に基づいた新しいカリキュラムを開発しつつ、学生が本学で学ぶ意味をより見出せるような教学改革を進めたいと考えており、本学の理念をしっかり伝えられる教育プログラムを構築していきたいと思っています。

(龍谷大学 白石 克孝 副学長)

入澤:この「仏教SDGs」をさらに推進していきたいという強い想いがあります。SDGsについて最初に聞いた時、行政や企業、産業界だけでなく、むしろ教育界、宗教界が率先して担うべき事柄ではないかと強く感じました。仏教界で今、それぞれの宗派の中で「仏教SDGs」を掲げている若手の僧侶が続々と現れています。そうした方々との連携、そして日本国内にある仏教系の大学との連携も考えているところです。
 本学が目指すSDGsに関して、例えば、日本国内で江戸時代に活躍した近江商人という商人たちがいます。有名な百貨店や商社のルーツを探っていくと近江商人に辿り着くことが多々あります。その近江商人を特色づける「売り手良し、買い手良し、世間良し」という言葉がありますが、この「世間良し」という発想こそがSDGsの先駆けとなるべきことだと考えています。社会の利益を追求する「世間良し」という立場にあるソーシャルビジネスがこれからは重要になると思います。私たちがソーシャルビジネス――社会の利益を考える人間を大学で育成していく、まさにそういう時代なのではないかと考えています。

(龍谷大学 入澤 崇 学長)

取材を終えて

 近年SDGsは注目のトピックですが、今回取材した「仏教SDGs」は、「誰一人取り残さない」持続可能な社会の実現を目指すというSDGsの目的と大学の行動哲学でもある「自省利他」という仏教の思想を掛け合わせた龍谷大学ならではの理念及び活動であるといえます。
 例えば、「ソーシャル企業認証制度」では、地元企業をソーシャル企業として認証することで成長をさらに促し、「社会起業家育成プログラム」では、社会が抱える課題に対するプレゼン等を通して学生に起業家精神を身に付けさせるなど、取材させていただいたいずれの活動も社会問題の解決のきっかけとなる取組みであると思いました。
 そしてこれらの取組みには、それぞれに関わる学生や教職員、地域の企業の方々の「お互いに協力し合う」という共通の想いが感じられ、学生にとって、他者を思いやることの大切さを学び、共に高め合いながら成長できる貴重な機会になっていました。


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