まず、三つのポリシー（方針）を知ろう！

　今、どの大学でも「三つのポリシー」を定めていることは、ご存知でしょうか？　三つのポリシーとは、①学位授与方針、②教育課程の編成・実施方針、③学生の受け入れ方針の総称です。
　何だか難しそうな名前ですが、以下に、それぞれの方針をわかりやすくご紹介します。

①学位授与方針→ディプロマ・ポリシー（以下ＤＰ）

　三つのポリシーの要であり、大学が学生にディプロマ（＝学位）を授与する上で、学生に身に付けることを求める知識、技能、態度といった、学習成果を示したものです。学生にとっては、学位を得るために必要な知識や能力を理解でき、卒業に向けて必要な学びが明確になります。
　
　また、大学選びをしている受験生にとっては、その大学を卒業する時に何ができるようになっていて、どのような資質を身に付けているかがイメージしやすく、企業にとっては、求める人材像に照らして雇用の際に役立つ情報となります。

②教育課程の編成・実施方針→カリキュラム・ポリシー（以下ＣＰ）

　学生がＤＰに示した学習成果を得られるように、どのような教育をどのような方法で行うのかを示しています。さしずめ、ＤＰの達成に向けた実施計画書といったところでしょうか。これを読むことでどのような教育を行っているのか、大学ごとの教育の個性や特徴を知ることができます。

③学生の受入れ方針　→アドミッション・ポリシー（以下ＡＰ）

　アドミッションとは「入学」という意味です。上記のＤＰ、ＣＰを踏まえて、その大学がどのような学生を求めているのか、入学者選抜の基本方針、また受験にあたって必要な知識や学力水準などを示したものです。ＡＰは大学の「入口」に関する方針として、主にその大学の志願者や保護者、学校関係者などに向けられたものになっています。

三つのポリシーから見える、大学の個性・特徴

 　三つのポリシーのうち、ＤＰとＣＰからは、大学がどのような人材を育成しようとしているのか、またそのためにどのような教育を行っているのかがわかります。そのため、高校生をはじめ、大学進学を考えて大学選びをしている人にとっては、こうしたポリシーがその大学を知るうえで役立つ情報になるでしょう。
　例えば、いくつかの「教育学科」で志望校選びに悩んでいる場合、それぞれの大学のＤＰ、ＣＰを読んでみると、教育現場で役立つ、実践的な学びを重視して教員養成に力を入れた教育学科もあれば、少人数の演習の授業を中心に、教育思想などを学べる教育学科もあることがわかります。このように、いくつかの大学と比べて読むことで、大学の特色が見えてきますし、同じ名前の学部でも、学びの内容はもとより、目指す方法も少しずつ違っていることがわかるでしょう。
　
　また、ＡＰも受験の際にとても重要な情報になります。ＡＰを読むことで、どんな学生を受け入れようとしているかを確認することができます。その大学に入学するために必要な能力も分かりますし、どのような準備をして入試に臨めばよいかを考えることができます。大学によっては、英検〇級程度の英語力が身についていることが望ましい、など具体的に記載されていることもありますし、卒業後の進路について言及している大学もあります。他のポリシーに比べて、平易な表現で書かれていることが多いです。
　推薦入試や総合型選抜で面接を受ける受験生は、志望理由を固める際の参考にすることもできます。また、出願に必要な条件が書いてあることもあるので、気になる大学は早めにチェックしてみましょう。

　三つのポリシーは、各大学のＨＰに掲載されていますが、場所が分かりにくい場合は、各大学のトップページの検索ツールで「三つのポリシー」または「三つの方針」と検索するのがおすすめです。

三つのポリシーと大学評価

　三つのポリシーは、大学がどのような教育を行うかの実施計画や、学生募集の方法などについて広く社会に公開するものですが、いかなる計画も立てただけでは「絵にかいたモチ」となってしまいます。ここで登場するのが、マネジメントなどの品質を高める概念でもあるＰＤＣＡサイクルです。目標を立てる（Ｐ）、実行する（Ｄ）、点検する（Ｃ）、改善する（Ａ）―大学は三つのポリシーに対しても、このサイクルをたゆみなく回し、学生がポリシーに示した学習成果を習得しているかを点検・評価し、必要に応じて教育方法を改善するなど、よりよい教育目指して努力しています。

　そして本協会は、大学評価において、三つのポリシーが適切に策定されているかを確認するだけでなく、大学のＰＤＣＡサイクルが適切に機能し、諸活動の質を大学自身が保証できているかを評価する役割を担っているのです。

総務部総務企画課　蔦美和子　藻利大地　井上陽子