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大学基準協会と私 #1|植木俊哉(東北大学理事・副学長)

 「大学基準協会と私」は、大学基準協会の活動に関わる方に、これまでの本協会での仕事を振り返りながら、本協会の活動の意義や本協会に期待することなどを語っていただく連載企画です。
 記念すべき第1回目は、東北大学理事・副学長の植木俊哉先生に、ご寄稿いただきました。

 私が大学基準協会と直接関わるようになったのは2006年のことであるので、それから既に十数年の歳月が経過した。この間、本協会のさまざまな場面で、日本の大学界をリードする多くの優れた先生方の謦咳に接する貴重な機会に恵まれたことは、大学に籍を置く者として本当に得がたい経験であった。

 本協会の理事会と評議員会は、日本を代表する国公私立大学のトップを務められる先生方により構成されているが、私の場合には理事会に出席する機会を与えられ、歴代の会長、副会長や多くの理事の先生方から、大学の認証評価制度の目指すべき方向や大学運営の基本理念、さらに社会において大学が担うべき役割や責務といった、大学の存在理由や基本哲学にかかわる根本問題についてのご教示とご示唆をいただいた。

 本協会の理事会における具体的な審議事項及び報告事項自体は、例えば認証評価をめぐる個別的な論点に関するものが多かったが、そこで行われる議論の端々から、日本を代表する各大学の最高責任者である学長の先生方がそれぞれの大学に関する基本理念と哲学、そして「思い」を垣間見ることができ、私自身にとって大変貴重な「学び」の場であった。

 このような日本の高等教育機関を代表する各大学の学長の先生方の(時に個人的な)お考えを直接学ぶ機会は、本協会の場以外にはなく、その意味で私自身は本協会において大学人としての薫陶を受け「育てられた」と言っても過言ではないと感じている。大学をめぐる多種多様な論点に関する具体的で多くの示唆に富んだ学びや気付きの機会を――それは時にささやかな驚きや大きな喜びを伴うものでもあった――本協会で得たことに感謝したい。

 このように本協会が日本において他に類を見ない貴重な高等教育に関する団体であることは、国立、公立、私立という設置形態の差異を越えて日本を代表する主要大学から構成されるという本協会の基本構造に由来するものである。

 今後もこのような団体としての特徴を最も重要な要素として堅持し、これを最大限活用していくべきものと考える。また、第2次世界大戦終結直後の1947年に国公私立の46大学を発起校として設立された大学団体であるという歴史的原点とそこで明示された設立目的は、本協会の存在理由として将来に向けても決して忘れ去られるべきではないだろう。

 本協会の有する以上のような特徴を実質的に最大限活用するための方策について、僭越ながら1点だけ私見を述べたい。コロナ禍の経験を経て日本でも諸会議のオンライン開催が一般化した。私も、オンライン開催の利便性と実用性は十分に理解するところであり、日本を代表する各大学のトップが非常に多忙なスケジュールの中で対面方式により一堂に会する会議を設営することの実務上の困難さも十二分に理解できる。

 しかし、私個人としては、コロナ禍以前の対面方式により開催されていた頃の本協会の理事会が懐かしい。そして、理事会や評議員会の「対面開催」には、「懐かしい」といった個人的感懐にとどまらない重要な実質的意義があるものと考える。

 日本を代表する国公私立の大学のリーダーが、本協会の理事会や評議員会の機会に一堂に会して、認証評価の問題にとどまらず社会の中での大学の役割や責務といった大学をめぐる重要な根本的課題に関して丁々発止の議論を行うとともに、会議の前後の個人的な意見交換などを通じて、お互いの個性や哲学を相互に理解し、親睦を深めると同時に大学のあるべき姿を率直に話し合う場、このような貴重な機会を提供できる組織は、現在の日本において本協会以外にないと言えるのではないだろうか。そして、このような役割こそ、本協会の真の意味での「存在理由」であるように個人的には考える。

 また、私が本協会に関わらせていただいたこの間、多くの素晴らしい優秀な職員の方々と出会い、いろいろと支えていただき、また大変お世話になったことに心から感謝したい。本協会の多様で幅広い諸活動が、このような優秀な職員の方々によって日常的に担われていることを決して忘れてはならないし、同時にこれらの方々には本協会のさらなる発展のためにますます活躍されることを大いに期待したい。

 最後に、これまで本協会でさまざまな機会に貴重なご教示と温かいご指導をいただいた歴代の会長、副会長、理事、評議員の先生方や職員の皆様方に改めて御礼を申し上げて、本稿の結びに代えたい。

大学基準協会理事
東北大学理事・副学長
植木 俊哉

※本記事は、広報誌『じゅあ JUAA』(第71号/2023年9月)に掲載した内容を一部修正し、再掲したものです。


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