JUAA職員によるブックレビュー#7
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JUAA職員によるブックレビュー#7

 このコーナーでは、大学基準協会職員が自らの興味・関心に基づく書籍等を紹介しつつ、それぞれが考えたことや感じたことを自由に発信していきます。大学の第三者評価機関に勤める職員の素顔を少しでも知っていただけたら幸いです。なお、掲載内容はあくまで職員個人の見解であり、大学基準協会の公式見解ではありません。

 今回のブックレビューを担当する総務部総務課の椹木と申します。いわゆる「管理部門」の役割を担う総務部で、人事業務など法人運営に関わる業務を行っています。

 さて、この業界で働いていると、様々なシチュエーションで「大学のあり方」について考えさせられますが、今回は採用業務を担当する人事担当者としての視点から、こちらの本を紹介したいと思います。

加藤諦三著、『大学で何を学ぶか』、ベストセラーズ、2009年

 著者は社会心理学者の加藤諦三氏。長寿ラジオ番組『テレフォン人生相談』のパーソナリティとしてご存知の方も多いかもしれません。
 本書は、「大学で学ぶ」ということについて、その姿勢や手段、目的、そして「大学での学び」とは何かを学生に伝えようという内容です。1979年の刊行本に新章を加筆、再構成して2009年に出版されたもので、初刊から約40年ということもあり時代の流れを感じさせる箇所もありますが、テーマの本質は今でも変わっていないと思います。そして、学生に向けて書かれた体裁ではあるものの、生き方論に通じる内容となっており、学生でなくても気付きのある一冊です。

 本書の一貫したメッセージは、自分自身の力で学び、考え、選択していくことの重要性です。著者は「まえがき」で大学について以下のように述べています。

 小学校、中学、高校とこれまでは同じベルトに乗っていたし、エスカレーターのように、乗るだけで運んでもらうことができた。
 だが、大学というところには、そんな動力つきで人間を運んでくれるものは何もない。自分の足で歩いていかなければならないところ、それが大学である。
(p.3)

 そして一冊を通して、「世間の評価より自分の評価の基準をもつようにしなければならない」(p.25)、「いったん自分の人生を他人の評価の上に築きだすと、他人の評価が大切になってくる」(p.83)、「他人の期待にこたえることだけに気をとられて歩くことの、あまりにもみじめな結果を負わされるのは、やはり自分なのである」(p.190)といった言葉が随所に散りばめられ、大学での学びのなかで、自分自身の価値基準を持ち、磨くことを求めています。

 そして大学での学びについても、単なる知識として終わらせず、そこから自分なりの考えを持つことの大切さを述べています。
 とある教授が出した試験問題のエピソードが紹介されています。不合格となった学生たちに、教授が話したのは、「私が出した問題は、浪漫主義の詩人の中で誰が好きで、その理由は?と問うたものだ。しかし、あなた方の答えは、詩の解説書の部分部分をあれこれ取ってきてまとめたものにすぎなかった。…(中略)…私が聞きたかったのは、シェリーならシェリーが好きだという、あなたの理由だ。たとえ稚拙な文章でも、自分の考えが書いてあればいいのだ」(p.108)というものでした。

 さて、私の経験から思い当たることを。新卒採用を行うとき、学生の皆さんからいただく応募書類の内容は、この試験問題のエピソードと同じことが言えるケースがたびたびあります。巷に溢れる「就活本(サイト)」で集めた、志望動機の書き方(文例付き)や業界・企業研究のやり方(まとめ付き)、といったテクニックをそのまま使ったり、志望先の公式サイトから集めたフレーズをコピペしたり、といった内容です。どこからか採ってきたコピペというのは、専門家でなくても、それなりに経験があれば一見して分かるものです。様々な情報を収集し、参考にすることは必要ですが、そこから自分の言葉に昇華しなければ、「この仕事がしたい」という気持ちは伝わらず、他のたくさんの応募者のなかに埋没してしまうでしょう。

 当然のことながら、この自分自身で考えるという学びへの姿勢は、大学時代だけではなく、社会人になっても(なってからこそ)求められるものです。と、偉そうに書きましたが、本書を読み、私自身、自らを振り返ると、日々の仕事や生活において知らず知らずのうちに前例や他者の意見に従う楽な道を選んでいることに気が付かされます。
 著者が言いたいことは、大学で自分自身の価値基準を持って考える姿勢を身に着けることで、その後の人生においても、自分自身で成長し、物事を発展させる力を発揮できるということではないでしょうか。

 大切なことは、卒業していくとき、最終的に自分を選択できるようになっている、ということである。…(中略)…「これからはお客様ではない、当事者だ」と自然に思えるようになって卒業していくことである。(p.141)

 大学で何をどのように学び、いよいよ社会の当事者となって世の中に出ていくのか、本書はその心構えについて考えさせてくれます。


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