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JUAA職員によるブックレビュー#19

 このコーナーでは、大学基準協会職員が自らの興味・関心に基づく書籍等を紹介しつつ、それぞれが考えたことや感じたことを自由に発信していきます。大学の第三者評価機関に勤める職員の素顔を少しでも知っていただけたら幸いです。なお、掲載内容はあくまで職員個人の見解であり、大学基準協会の公式見解ではありません。

 評価事業部評価第1課の串田と申します。主に大学評価に係る業務を担当しています。

 本協会の大学評価では、毎年9月から10月にかけて、評価申請大学を対象とした実地調査を2日間かけて行います。現在このシーズンが佳境を迎えています。
 実地調査では、評価の正確性や妥当性を高めるために、大学関係者と評価者の面談等を通じて、必要な情報や資料を収集していきます。そのなかでは、人と人の対話において相手から何を引き出せるかということがとても重要だと感じています。そのため、今回はこのような本を手にとってみました。

原正紀著、『インタビューの教科書』同友館、2010年

 本書は「企画・アプローチ」(第1章)の段階から、「事前の準備」(第2章)、「インタビュー本番」(第3章)、「インタビュー後」(第5章)のそれぞれにおいて必要なポイントが順を追って示されているほか、「インタビュー場面」(第4章)に応じた対応方法などのポイントが丁寧に説明されています。

 著者の原正紀氏は、(株)リクルートにお勤め後、人財ビジネス(株)クオリティオブライフの取締役社長に就任されているかたわら、高知大学客員教授や成城大学非常勤講師としても務めていらっしゃいます。過去に多くの会社の経営者等にインタビュアーとして対峙した経験、また、インタビューを受けた経験から、インタビューを行うにあたって、相手との関係性を築いたうえで、トピックを掘り下げていくことが重要であるとし、「企画・アプローチ」から「インタビュー後」までのどの段階にあってもそのことを常に心がけて臨んでいるということです。
 例えば、「事前の準備」では、信頼関係づくりのため、「相手から何かを引き出すばかりでなく、こちらからもある程度自己開示するのが基本」であるとしているほか、「インタビュー本番」では、一方的に話を聞くばかりではなく、こちらからの働きかけで相手の本音や深い部分を聞き出していくことが必要であるとしています。

 また、筆者はこんなことも述べています。

本来の意味での「インタビュー」にするためには、相手自身すら気づいていない本質を一緒に掘り下げたり、忘れていたような意外な面白いエピソードを引き出すために支援を広げるよう質問していったりする必要があります。つまり、インタビューの場にその人がいることで、どれだけ話のクオリティが高まるかが、まさにインタビュアーの価値なのです。

(引用196頁)

 個人的には、「相手自身すら気づいていない本質を一緒に掘り下げ」るという点について、「インタビュー」は単に質問をしてその答えを聞くだけの作業ではなく、対話によって相手の話す内容を整理したり、新たな気づきを与えたりすることができるものと考えました。そして、その方法を学ぶことができれば、日常でも人と話をするなかで活用できる考え方であると感じます。
 私自身の業務経験に照らしてみても、例えば冒頭にお話しした実地調査において、大学の方々が評価者との質疑応答を行うなかで、「大学の問題点や強みに気づけた」というような感想をお話しされることがあります。そのように、大学の特色を引き出せるようなやり取りが「インタビュー」なのだと感じました。1年間という大学評価(認証評価)の期間中で、申請大学の方々と本協会が最も密に関わることができる2日間になりますので、「インタビュー」を通じてお互いの理解を深められれば、評価の在り方をより有効なものとすることができるようにも思います。
 本書では、相手自身すら気づいていない本質を一緒に掘り下げるためのポイントに関して、特に言及されている訳ではありませんが、「インタビュー」の経験を重ねることで、それらを自分なりに見つけていくことができれば良いと思いました。

 図解も多く読みやすい書籍で、「インタビュー」前のアポイントの取り方から実施後のお礼に至るまでの基本的な流れやポイントもわかるような構成になっており、特に学生に向けて、就職活動中に行う企業訪問などにも役立ちそうな1冊だと思います。

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